私の生きる道
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「藤田時尾に名前も変えたんでしょう?お陰で探すの大変だったんですから。」
笑いを崩さず当たり前のように話を続ける
『瀬田宗次郎』
「にしても瞳さんも綺麗になりましたよね。まぁあの時は旅の途中だったみたいだからしょうがないのかもしれないですけど、あんまりにも綺麗だから思わず見入っちゃいましたよー。やっぱり袴姿で男ものの着物来てるより今の方が素敵ですね。
本当に『新撰組三番隊組長斎藤一』と結婚しちゃったんですか?」
この男はどこでこんな全く表にしてない隠し通してる情報を掴んできたのか。
二人が古くからの名前で呼び合うのは、気配へももちろん何もかもに注意を重ねた上での二人っきりのときだけだし
一さんの情報は一さん含め警視庁でもまだごく一部の人にしか知られていないはず。
警察に属してない私の存在についての情報なんて尚更のはずなのに。
この男、
知りすぎてる。
きっと知られてる情報は二人のことだけじゃない。
漏れてる情報を知ってるのもこの男だけじゃないだろう。
だめだよ一さんダダもれです。
どこから漏れたかも一緒に引き出してしまわなくちゃ。
今後の一さんの命にも関わってしまうかもしれない。
とりあえず
声を出されちゃ困るけど
足の一本でもいただいた方がいいかしら。
総司さんとよく似たこの人に傷を負わせるのは心苦しいけど...
ハタキの柄、特別に鉄で先尖らせて作ってもらっておいてよかった。
握る手に力を込めるとまた名を呼ばれる。
「瞳さん?お願いですからそんなに警戒しないでください。僕は貴女とやり合う気はないんです。武器も持っていません。
『宗ちゃん』っていったら思い出してくれます?」
「え?...そう、ちゃん?」
「そう、宗ちゃん。僕のことそう呼んで抱きしめてくれたの、瞳さんぐらいなのに。」
「宗ちゃん?宗次郎?」
「はい。志々雄さんとこの宗次郎です。」
「志々雄...真実さんとこの?」
「はい。」
「宗ちゃん??」
「はい!」
おかしい。
一応密偵するために隠密してる友達に色々手ほどき受けたし、幕末を私も生きていたわけですから、警戒してるのなんて勘ぐらせないだけの技術は身につけてるのに
どうしてわかった??
そんな疑問も浮かんできそうなものだったけど
実際は続けられていく懐かしいあだ名や最近よく聞く名前と
そのあだ名を私が呼ぶとその度綻ぶような笑顔をくれる目の前の青年に
覚えがあるだけでよく見えなかったものがはっきり見えてきた。