私の生きる道

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ハァッ ハァッ ハァッ



「よかった、まだ降りてきて、いらっしゃらない、みたい...」





五郎さんの奥さんとして生活するようになってから
普段から男物の着物を着ることは無くなって、基本女物を着て時尾として生活している。
他の一般女性と変わらない。

だからそんな動きにくい恰好で昔みたいに走りまわることもなかったから、正直、少しだけ疲れました。

家からここまで距離があるにしても、自分の息が切れるなんてとても希少で珍しい。
足も開くことができないから小股で走らなければならないし、
せっかくの外食に化粧や髪が崩れ、着物まで着崩していきたくはないから、
被害を最小限に抑えようと注意しながら走るとなんというか変に体力を浪費してしまって。

でもその甲斐があったのか、警察庁の入口が見える道に入っても五郎さんの姿は見えないし、ついてから軽く周りに視線を向けてみてもその姿はなくて、
あぁ間に合ったんだってホッと一息つくことができた。

入口の真ん前で立っていたら邪魔だろうからと門の端へ移動して待つことにした。
一度深呼吸すると、切れていた息もすぐに治まり、雲の流れを見上げているとかけられた声。
お昼時だからか交代の時間なのか、門衛に出てきた人。
見たことない人だから、新人の方かしら?



「何か御用ですか?」

「いえ、少し待ち合わせをしているだけですのでお気になさらないでください。」

「...あなた、もしや藤田時尾さんですか?」

「?そうですが?」

「あぁ、やっぱり!」

「やっぱり??」

「藤田警部補や先輩方からお話をお伺いしておりまして。」

「そうですか、挨拶もせず失礼いたしました。いつも主人がお世話になっております。」

「そんな滅相もない!
そうだ、伝言をお預かりしていいるんです!
藤田警部補が、『着いたら私の執務室に来るように』と。」

「あら、そうなんですか?」



話を伺うって、いったいどんな話をしてくれてるんだろう。五郎さんだけでなく他の先輩からもって...

まぁいいや。
執務室に来いってことは、仕事が立て込んでて時間のメドが立ちそうにないのかしら。
とりあえず執務室ね。



「すみません、伝えるのが遅くなってしまって。少しここを離れていたので...待たせてしまいましたか?」

「いいえ、先ほど着いたばかりなんです。伝言ありがとうございます。」

「いえ。ならすれ違いだったんですね。警部補も先ほどまでこちらにいらっしゃってたのですが、伝言を残されて執務室に戻られたんですよ。ご案内いたします。」

「え”」

「どうかされましたか?」

「いえ、あの、一人で大丈夫です。よくお昼届けさせてもらってるので場所はわかりますから。」

「そうですか?」

「はい、お気遣いありがとうございます。それでは失礼しますね。」





ヤバい。

間に合ってなかったんだ。

新人くんへの会釈も早々切り上げ、小走りとまではいかないまでも、速めに歩く。
廊下を歩けば知る顔に出逢うも、こちらも挨拶一言程度で切り上げて速めに歩く。
建物の中を走ったら怒られるので速めに歩く。

待たせてしまって、待ちくたびれて部屋に戻ったんだとしたら、恐らく機嫌は悪いだろう。
こんなだったら形振り構わず走ってくればよかった...
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