私の生きる道
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「その分今、俺が新しい選択肢与えたる。」
静かに続きを促がすように、お茶に向けていた視線をこちらへ向ける蒼紫に一言一言ゆっくりはっきりと伝えていく。
「昔蒼紫に士官の話持ってきた阿呆と俺を一緒にせんでや?
お前一人やのうて、他の4人も勿論一緒にや。
立場は俺と同じ密偵。密偵とか、お前らには一番似合いやろ?
上司はこれまた誠を貫く新撰組の生き残りやからな、誇りを汚さないかんような仕事は一切ない。
......こっちは今ちょうど国の行く末を左右するような大きな戦目前に控えとる。いくらでも仕事はあんで?いくらでもその腕を振るえる。
悪い話ちゃうやろ?」
「そうかもしれん...
だが今すぐこの仕事を投げるつもりはない。
例え観柳がいかに屑であろうと、そのお陰で今回はいい獲物に出逢えた。
......お前には悪いがな。」
「いい獲物?」
「あぁ......伝説の人斬り抜刀斎......
お前の探し人だ。」
「あぁ、なるほどな。」
「??......なんだ。もう見つけていたのか。」
そんな処でもがいてないで、こっちにくればいい。
来てくれたらいい。
戦いたいなら、戦える場所を用意してあげる。
居場所を作ってあげる。
今の私はそれができる位置にいる。
情に厚い蒼紫たちに武田の用心棒なんて...
今こっちは戦力不足の人手不足だから、一さんも問題なく受け入れてくれるはず。
やりたいようにやればいいって言ってたし。
それに、みんなが同志になってくれたらこんなに心強くて嬉しいことはないわ。
そう思って勧誘を続けていると、蒼紫からまさかの『だが』という逆説。
まさか断るはずがないと、自分が怪訝な表情をしているのも気にせず聞いていると
こちらを窺うように、気遣う様に続けられた言葉にホッとした。
一緒に旅してる間も、ずっと探してたもんなー...
一緒に探してもらってたりもしたからなー...
そりゃ気になるよね。
気にしてくれるよね。
本当に優しい子。
「ん?それが蒼紫の言っとった話したいことやったんか?」
「...」
「実はまだ会うとらへんねんけどなー。ちょっと前にな、どこにおるか情報入ってきてん。教えてくれよーとしておーきにな!」
「へらへらと感謝などしていていいのか?
抜刀斎は獲物だと言ったんだ。
俺は......幕末最強と謳われた人斬り抜刀斎を倒して御庭番衆こそが最強であるということを示し、最強という名の艶やかな華を御庭番衆の名にそえてみせる。
この機会を逃すつもりはさらさらない。」
「あぁ、別にかまへんかまへん。」
「なに...?」
「実はなー、そっちがほんまもんの任務でな、」
「任務?」
「さっきも言うた大きな戦がな、本格化してくる前にな、緋村抜刀斎の力借りよか―って話が浮上してるみたいでな、使いもんになるかならんか見なあかんねん。
今回蒼紫、戦うことになりそうやん?せっかくやからそれ見させてもらおー思てな。
武田シメてからになると、あのお人好しも本気はだせんやろし。」
「見るだけでいいのか?あんなに探していたのに。
......俺は奴を殺すぞ?」
「どっちも死なんよー。まあ邪魔せん程度に勝手に動くから俺のことは気ィ遣わんと存分に戦ってくれてえーで?
なんなら剣は二度と握れん程度に痛めつけてくれてもかまわん。それで蒼紫、あんたの勝ちになるしな。」
「当て馬になれと?」
「んー?目的は違うけど、便乗させてもらえるもんはさせてもらおうか思てな。
今回の任務、力量見るってだけやねん。他は好き勝手やっていいって上司が言うとってな。
それなら御庭番引き込んで武田も締め上げとこ思て。あいついい加減腹立つ通り越して気持ち悪いから。」
「......」
「ん?」
「......お前は密偵にむかんな。口が軽すぎるし上に私情を持ち込む。」
「むかんと思うんなら助けてーな!
ただ勘違いすんなや?こんなに話してんのは信頼と確信があるからやで?」