私の生きる道
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カタッ
窓を開けて外の空気を中に取り入れる。
日も昇り始めた朝方。
今日もいい天気ね。
家にいたら、きっと今頃洗濯に精をだしてるだろうなーなんて、男のナリして格好に似合わないことを考えた。
早ければ今夜...
もしくは明日にでも一さんのところに戻れるだろうと思うと、早く帰りたいという気持ちも湧き上がってくる。
昨日放れたばかりだというのに、早く戻りたいだなんてどれほど私の心は落ち着いていないんだろう...
シュルッ
窓の外に向けていた目を室内に向けると、色男が寝着の帯に手をかけていた。
元側近という設定にしたからか、同室になった蒼紫と目が合う。
「なんだ。」
「なんも?」
「...」
「気ィつけてな?」
「いらん心配だ。」
会話を続けながら着替えを済ませる蒼紫を見て、男なのに色っぽいなと思わされた。
なにその色気。
女の私でも勝てる気がしない...
一瞬武田に本当に手をつけられてないのか気になったけど、そんなことあるはずないし、聞いたらさすがの蒼紫も二度目の質問に本気で拗ねるんじゃないかと自重した。
着替えを済ませた蒼紫は、これから般若さんとあのカスと一緒に神谷道場とやらに向かって高荷恵と接触するらしいから
早くても日の暮れた頃には『緋村抜刀斎』も武田邸にくるんだろう。
あの人の姿をこの目で確認するのももうすぐなんだろうと考えたら、心が震えて、心の臓が締めつけられる。
こわい
あいたい
あいたくない
こわい
見るだけだってわかってる
でももしかしたら接触することもあるかもしれない
会ってもわからないように変装はするけど、冷静でいれるのかな
接触することになった時、どう対応すべきか頭にあるけれど、その通りにできるのか...
瞳でなく新津で通せるか
瞳に戻ってしまうんじゃないか
私としてあの人に会ってしまうことが、こわくてたまらない
だから、一さんのもとに帰って安心したいと思ってしまうのかな...
情けない。
自分が情けなくなる半面、こんな時に一さんを求めてしまうなんてどれだけ私の中で一さんが大きな存在になっているのかと心が温かくなっていく。
そうだ...
そうだよね。
一さんが私を思って持ってきてくれた仕事...
一さんが私を信じて待っててくれてるんだ。
その上、蒼紫たちも今回は一緒にいてくれてる。
大丈夫......にしなきゃ。
それに、一さんの元に、一さんの力にもなるだろう私の大切なお庭番五人を引き連れて一緒に帰れるのは嬉しいし、また一緒にいられるんだって考えたら楽しみでしょうがないもの。
昨日とかみんなとの久々の再会、ものすごかったんだから。
怪我人いたんじゃなかったの?っていうくらい皆元気に喜んでくれて、お酒は無しで通したってのに遅くまでまるでどんちゃん騒ぎ。
あんな空気の中に一さんも一緒にいるのは正直考えられないけど、彼らとまた一緒にいれるんだって、一緒に仕事できるんだって考えたら、もうすぐにでも引き上げたい気分。
うん、頑張ろう。
いつのまにか考え込んでいたら
何やら心配そうに距離を詰めてきて、頭に手を置き「行ってくる」と言ってくれる蒼紫の頭に背伸びをして手を乗せ返し、「はよ帰ってきてな❤」ってせっかく整えられた髪を目茶苦茶にして笑顔で見送った。
程無くして聞こえてきた馬車の音で、三人が出発したことがわかった。
あのひょろひょろ変態眼鏡、少しは歩いて運動すればいいのにね。
さぁ、私もそろそろ仕事しなくちゃ。
蒼紫の文机に向かい、紙切れと書くものを拝借。
さっさとこの件は終わらしてしまいたいからね、一さんは放っておいたらいいって言ってたけどやっぱり警官隊にも動いてもらおう。
日付の変わる頃......もしくは丑の刻には蒼紫とあの人の一戦もケリがつくはず。
それが終わればすぐに乗り込んでもらえるように、敷地内に連絡役として二人、屋敷からそう離れていない場所に警官隊を密かに配備してもらおうかな。
その旨を簡潔に一言二言書いて袖に忍ばせる。
よし!
準備もできたし、武田がここを離れてる間にちょっと抜け出しましょうか!
目指すは一さんの部下が待機してるだろうお茶屋さん!
途中報告にいざ出発!
せっかくだから急いでいって美味しい茶菓子もいただいてこようかな。