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シュークリームを買った。

ちょっと怒らせてしまった気するから。

せっかく今日はいい感じに行こうと段取り組んでたのにここで崩すわけにはいかへんし。
せっかく一緒におれる時間イライラした雰囲気嫌やし。



シュークリームを買った。

どこで買ったかって?

聞いてくれる?

女の子に大人気の、色んなスイーツの店が入ってる小さい店で買ってん。


仕事帰りの時間や。
仕事帰りの女がよーさんおる。
若い大学帰りっぽい女もおる。
店を見たらやな、ぴんくいキャピキャピした雰囲気がモワーと溢れでとる。


その中に俺は入っていってん。

すごない?俺すごない??俺は俺を尊敬する。


またその店の袋、主な販売対象が女なんやろうな、残念なことにかわいらしいねん。デザインも形もなかなか気合い入っとる。

男は買わんでいいと?入ってくるなと?この店のもんは食わんでいいと?
男かて甘いもん食いたくなることあるねんなめんな!

前にひとみにここのシュークリームが好きやって聞いとらんかったらこんなとこ一人で入らんかったのに。

この俺の苦労と努力が実ってひとみの機嫌が一瞬にしてなおったらいいんやけどな...



夜になったいうてもまだまだあっつい。せやから保冷剤もよーさんいれてもろた。長い道のりを急ぎで競歩のごとく歩いて、チャリ乗って、帰ってきた。




カチャ

ガチャ

「ただいまー。」




ドア開けたら昨日はダッシュで来てくれて、なんや後ろついて歩いてきよって、可愛らしかってんで?それがどーや?今日はむかえにくるどころか「ただいま」言うても返事すら聞こえへん。TVの音とか、なんも聞こえへんのに俺の声が聞こえんっちゅーことはないやろ。

居留守か?
なんか作業中か?
やっぱおこっとんのか?




「ただいまー?帰ったで?」




あいつが本気で怒ることなんかそーないことや。

若干ビビる。

けっこービビる。

ビビりながらリビングに入ると、ダイニングテーブルに飯を並べてるらしいひとみの後姿を見つけてもう一度声をかける。

が、返事はない。ただの屍のようだ。

あかんこんなん言うたらもっと怒らせてまう。

やっぱおこっとんのか。
おこっとんならおこっとるって言うてくれよ。わかりにくいやっちゃなぁ。

しかぁし!!
今日の俺にはシュークリームという力強い味方がおる!!
怒れるひとみ!!
恐るるに足らず!!

せやから大丈夫や俺!
勇気出してもー一回声かけるんや!
なんも怖いことあらへん!!






ゴクッ






「ひとみ?まだおこっとんの?」

「ぅおぁ!びっくりした―。
驚かさんでよ。一瞬心臓止まったし。」

「さっきから何回も声かけてたのに無視してたんそっちやん。もっとかわいらしー叫べよ、どこの親父が家におるんかと思うやんけ。」

「そんな親父好きになった人どこのどいつよ。」

「俺やな。」

「...帰ってきたの全然気付かなかった。」

「ほんまかいな。まだ怒っとんとちゃうん。」

「電話のこと?怒ってないって。ちょっとショックだったけど。考え事してたーごめんね。」



なんやねん、ほんまに怒っとらんのかい。そしたらこのシュー、買わなんでよかったやんけ。

...

にしても、そやったら何をそんなに考えとってん。
同じ部屋に入ってきとったのに、それにも気付かんてどんだけやねん。変質者やったらどーする?確実に後ろ取られとったで。もっと危機感もたなあかんやろ。

...

もしかして、そんなに考え込むほどショックうけさせてしもたんか??
シューで復活してくれるやろか...
俺の努力を買ってくれ!!


「ほら、土産。」

「あ!この袋!!買ってきてくれたの??」

「なんや甘いもん食べた―なってな。俺のん買うついでやし、買ってきてん。から揚げの後に食べよーや。」

「ありがとー嬉しい!じゃあ冷蔵庫入れとくね。」


なんやルンルンで袋受け取られた。
なんやねん、やっぱ元気やん。
そんな気にしんでいいやん大丈夫やん。

ひとみの笑顔みて一安心したものの

から揚げ見ようとテーブルの上に目を向けたら、なんや置き方がいつもよりぐちゃぐちゃやった。
いつももっと、並べ方とか食器とか、こだわってるっぽいのに。この食器は私ので、この食器は和真のって可愛らしいこと言いながら並べとんのに。

昨日の夜もおかしかったけど、今日もなんか違うおかしさがある。

なんなんや?
スッキリせん。
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