U

□42
1ページ/2ページ

和真のから揚げ好きはハンパない。

あんなにあったのに一気になくなった。

そら太るわ。

おなかポッコンとなってくるわ。

ロイは何度も、おいしいって色んな言い方で伝えてくれてすごく嬉しい。
和真は普段あんなによくしゃべるのに何度もじゃなくて、一口目で一回だけボソッと独り言みたいに、うんうまいって言ってくれる。ほんとにおいしいって思ってもらえたのかなって、すごく嬉しくなる。

お互いご飯を食べ終えて、和真は煙草休憩ってベランダに出てった。
その間に私は食器を片づける。

きっとこんな生活が続いて行くんだろうなと思う。

食器を食洗機に入れきった頃には
アルコールも軽く抜けた、ちょっとだけタバコ臭い和真が戻ってきてTVをつけた。

ゆっくりまったりぐったりしてる和真を横目に、買ってきてくれたデザートを準備する。

和真の好きなアイスコーヒーを入れて
シュークリームをお皿に出そうと、袋を冷蔵庫から出して中を見ると、


おぉ。


なんでこんなに入ってるのか。

4つもあるんですけど。

あの人はいくつ食べる気なんだ。


「ねぇ、シュークリームどれ食べる?」

「ふつーのんと、クッキーシュー。あとはひとみのなー。」

「二つも食べていいの?ありがとう。じゃーせっかくだから一つは明日においとこうかな。」


ここのシュークリーム、けっこー高いのに。
なんか、和真の気持ちが嬉しい。

せっかくだし、ロイにも食べさせてあげたいって思ってたから私の分の一個、あとであげてみよう。
おいしいものは、みんなで食べたほうがおいしいもんね。
一緒には食べれないけど...
私が好きなの、ロイの口にもあったらいいな。


「あ、今日はお風呂どうする?」

「一緒になら入ろかな。」

「は!?」


コーヒーとシュークリームをリビングのテーブルの上に置きながら、今日は入らないだろうと思いながら念のために聞いてみたら予想外の言葉が帰ってきた。


「『は!?』ってなにをそんな驚いとんねん。」

「だってそんなん急に言われたらビックリするし恥ずかしいし。」

「いまさら恥ずかしがらんでえーやん。もー何回一緒にはいっとんねん。」

「そりゃ久しぶりだし...」

「えーやん。なおえーやん。よし。風呂入る。一緒に入る。決定。」

「...とりあえず沸かしてくるね。」

「おぅ、頼むわ。」


やだもーどーしよう。
今の聞こえたかな。
聞こえてないよね?聞こえてないですよね??
もし万が一聞こえてたりなんかしたら恥ずかしすぎて死ねる...

シューにもコーヒーにも手をのばさず、風呂場に逃げる。
昨日のお湯は抜いて軽く洗ってたから、後は栓してフタして自動ボタンを押すだけ。


「ひとみー!」

「なにー?」

「今日やるからー!」

「!?」

「今日やるからなー!」

「声おっきすぎ!!」


栓する前にシャワーで軽く浴槽を流してたら名前を呼ばれて、何かと聞いたらさっきよりとんでもない言葉が響いてきた。

なんてことをそんな大声で何回も...

驚きで一瞬声も出なかったし。

やだもー勘弁してください。
ほんま勘弁してください。
今の絶対聞こえた。
ロイどころかお隣さんにも聞こえた。
やだもーこれからどんな顔して会っていけばいいの?
あとでロイに差し入れ持っていこうと思ってたのに...

これが電話で言ってた羞恥プレーか!?
私羞恥プレー嫌い...
前から思ってたけどもう少しマシな誘い方ないの??
もーちょいデリカシーもってくれてもいいのに...
すぐ隣にロイがいるって知らないというのを差し引いたとしても、声でかすぎる...

ロイは集中し過ぎてまったく聞こえてなかったらいいのに。

あ!

それに『今日やるから』としか言ってない!私たちの間はそれで通じるけど、他の人はそうじゃないはず。
何するの?ってなったらいい。
でも
頭のいいロイのことだから勘付きそうだけど...

あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ



せっかくのシュークリムとコーヒー。

食後のリッチな一服なはずなのに

あんまり味が分かんない。


求めてくれるのは嬉しいはずなのに、
お風呂、一人がいいなーとか
せめてロイが帰るまで控えたいなーとか
そう思っちゃうのはきっと

同じ屋根の下にロイがいるから。
和真には見えなくても私には見えるから。
しっかり存在してるから。

それに

ロイに会いたくても会えない想い人がいるって聞いてしまったからかもしれない...
自分だけそんな...
なんていうのかな...
よくわかんない...


あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ

ロイに知られたくないよぉぉぉぉぉおおお


いっぱいいっぱいです。
一人美味しそうに召し上がりやがってこんちくしょー。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ