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人通りが増えてきた。



夫婦で健康の為か散歩している老夫婦。
ジョギングしている人。
犬の散歩にきている人。

明け方はそんな人が多かったというのに、気が付いたら

スーツを着て会社へ向かうような人。
小さな子供を連れて川へ遊びに来る人。
車の音も増えてきた。



にぎやかになったものだ。



...ん?



にぎやかになったものだ??



サァッと血の気が引いて行くのを感じる。
今は一体何時だ?
私はどれぐらいの間ここで本を読んでいた?
あいにく時計は持っていない。

さっきからスーツ姿の人が増えている...
もう和真は仕事へ向かったのだろうか?
ひとみは?
ひとみはもう活動し始めているか?

やばい!!

どうこう考えている暇はない!!

二人が起き出す前に戻る予定だったんだ。
置き手紙に外へ出ることは書かなかった...
クソッ、書いておけばよかったな。
もし私がいないことに気付いていたら、心配させているかもしれん。
急いで戻らなければ。

カバンに読んでいた本を押し込んで家へ急いだ。










バリッ



ガチャ



家につき、しっかりかけられている鍵を先ほど使った錬成陣で開けて重みのあるドアを押しあけ中に入ると、
案の定、和真の靴がない。

やはりもう起きてしまっていたか...
そんな後悔とも言えない考えが浮かんできたが、それよりも妙な違和感が心に拡がっていく。



和真の靴はないから、あれは仕事へ行ったんだろうが...

ひとみはどうした??
いつもなら和真を見送った後は朝食の準備をして私を起しに来てくれているはずだ...

なのになぜ、家の中から何も音がしない?

彼女に限って寝坊ということはないだろうし、まだ和真を見送って時間がたっていないというなら台所で朝食の用意をしている音が聞こえてきてもいいはず。
だがそれも聞こえない...

ならもう朝食の用意は終えて、私の留守に気付いてしまっている状態か?
...書き置きも残さなかったからな、心配させて怒らせてしまっているかもしれん...

にしてもなぜ無音なのか...

考えてもわからない疑問に、考えているだけでは何もわからんととりあえずリビングへ向かうことにする。



なんだろう、この変な緊張感は。
冷や汗も流れてきそうだ。
母に怒られるのを恐れる子どものような心境もあるのかもしれん。

おのずと忍び足になってしまうことに少し笑えてしまう。



静かに静かに

リビングへ続くドアを開けた。
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