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ダンッ
中途半端に少しだけあいていた襖を、セーブできずに力任せに開ける。
あんなひとみの声を聞いて制御できるわけがない。
大きな音が部屋に響き渡る。
そして襖を全開させたことで目に入った光景に頭の中が真っ白になる。
ちょうど昨日私がずっと座り込んでいた柱のあたりに
探していた愛しい人はいた。
襖を開けた音でこちらに気付いたのか私に目を向け、その瞳は驚きに見開かれている。
それだけならまだよかった。
痛みに耐えるかのように
片手に何かを握りしめながら
もう片方の手で腹部を抑えるようにして丸くなり
横になっている姿。
こちらを見ようとするも、動くのが辛いのか少し首を捻るだけで体を起こすことは難しそうなのは一目瞭然。
その顔は
血の気が失せてしまっていて雪のように白く色をなくしてしまっている。
何か恐ろしいことがあったのか、目の周りや頬は涙で酷く濡れていて...
彼女のそんな姿を見るや否や、私の体は彼女のもとへと駆けだしていた。
「ひとみ!何があった!?大丈夫か!!」
「ろぃ?ロイなの?」
「あぁ、そうだよ、」
「ほんとに?ゆめじゃない?」
「あぁ、夢なんかじゃないさ。どこか怪我をしていないか?顔色が酷過ぎる。」
彼女の体に手をのばし、傷などの状態の確認をしようとするとその手はひとみによって止められた。
止められたというより、抱きしめられたといった方が正しいのか。
私の存在を確かめるように強く抱きしめながら「ロイ」「よかった」と何度も繰り返すその姿に、彼女がどれだけ不安だったのか、私をどれほど求めてくれていたのかが伝わってくる。
だが、
ひとみから抱きしめられ求められるのは嬉しいが、今はそんな場合じゃない。
それよりもまず体の状態を確認しなくては。
「ひとみ、先に傷の確認を、」
「傷?怪我したの?酷くなったの?」
そう言いながら私を見上げ、またその瞳から涙が溢れ出してくる。
一体どうしたというのか。
一体何があったというのか。
どうして今日という日に限って私はこの人から離れてしまったんだろう。
せめてもう少し早く帰ってきていたら何か変わったのだろうか。
考えてもどうしようもない過去への後悔に襲われる。
...が、今はそれよりひとみだ。
こんな状態になっても涙を流し人の心配をするこの人に、胸が締め付けられる。
不安に歪められて涙を流すこの人を、安心させるために強く抱きしめ返した。