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いつの間にやら


どこまでも深く熟睡してしまっていたようだ。





でなければこんな状況になったときに


その衝撃で目が覚めていたはず...








目を覚ました私の目の前にあったのは



ひとみのきれいで柔らかい、私がキスをおとした黒髪ではなく

ひとみの、力が抜けて安心しきったように頬を緩めた寝顔。


彼女の吐く息は、私の顎から首にかけてあたり、くすぐってくれる。


私の胸部に当たっているのは、彼女の柔らかい胸。


私の右腕は相変わらず彼女を抱きしめているが

私の若干痺れている左腕の上にあったひとみの手は、私の背に回されてがっちりとホールドされている。



つまり向き合う形で隙間を埋め尽くすように抱き合っている状態だ。

二人の間の距離は、やはりゼロに近い...







寝ぼけていた頭が一気に覚醒した。

睡眠をとったことで脳が休息をとれた故の覚醒なのか
今の状況故の覚醒なのか。

恐らく後者だろうな。





自分で『後悔するなよ』とか言っていたのに
、さっそく後悔しそうだ。

いや、後悔じゃないな。
くじけそうだといった方が正しい。





これは新手の拷問か??





文字通り目の前に、
息のかかる距離にひとみの顔があり、
ひとみの唇がある。

今まで何度か
抱きしめたことも
抱きしめられたことも
抱きしめあったこともあったが

互いの間にあるのは二人の身を包んでいる服だけといったような
ここまで力の抜けて全身が触れ合っているような状況はありえなかった。
しかも寝床でだ。


私の体に力が入り、少しでも距離をとろうとしようものなら
ひとみは私を追う様にすりよってきて、まわしてくれている腕の力をより込めてくる。

『んっ』

などという艶やかな声までおまけしてくれてだ。



動揺しないはずがない。


反応しないはずがないじゃないか。


やばいな...


気付かれなければいいのだが...

ひとみのおかげで久しぶりに気持ちよく心穏やかに寝られた。
十分な睡眠をとって休めたんだ。

頭も体も回復できたから尚更だろう?

ひとみが目覚める前になんとか鎮めなければ。
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