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スススッ





「こら、ゆっくり休んでいろといっただろう?」

「だって...一人だと寂しいって言うか不安になるんだもの...」

「っ!!...仕方がない。暑いから冷房をつけているとはいえ、体を冷やし過ぎないようにしなくてはな。」





静かに襖が空いたかと思えばおずおずと血の気を失った顔を覗かせるひとみがいた。

ゆっくりしていると本人も言っていたのに...
その顔色の原因が毎月あるものだとわかってはいても気が気じゃなくなるんだ。
朝の苦しみようだって脳裏に焼き付いている。

布団で休ませて、早く作って和室に料理を運ぼうと思っていたのに
静かに小さくなって座り込みながらそんなことを言われたら何も言えなくなってしまう。


可愛いじゃないか。


今日のひとみは可愛らしさが半端ない。
これが計算なのか天然なのかは計り知れないが、今はそんなことはどうでもいいか。
胸を高鳴らしている場合ではなくて、彼女がすごしやすい空間を作らなければ。

冷房をいつもより高めの温度に設定し、ひとみに断わりを入れ、和室から薄い掛け布団を持ってきてソファに座るひとみを一度立たせて下半身に巻きつける。



「そんなに気にしなくても大丈夫だよ?」

「君が気にしなくても私が気にするんだ...過保護なお父さんだなどと言わないでくれよ?」

「言わないから!でもほら、見て?直立できてるでしょ?」

「それは薬を飲まなければ直立もできないということかい?」

「あ”...いや、そんなことは...あるんだけど...」

「...また薬をとるためにも軽く腹に入れなければな。」



もし薬が切れると、また朝のように横になり歩けないほど苦しむことになるのか...
私に心配させないようにしようとしてくれるのは嬉しいとも思うが、私はそんなに頼りないんだろうか...
墓穴を掘ってくれるひとみになんとも言えない気持ちになる。

布団を巻きつけてまたソファに座らせ、キッチンに戻った。



「すまないがキッチン、入らせてもらうよ?」

「うん、ありがとう。わからないことあったら聞いてね?」

「あぁ、そうさせてもらうよ。リクエストはあるかい?」

「お腹は空いてるけど量は入らないしなー...軽めのものをお願いします。」



キッチンは女の城だと聞いたことがある。
勝手に作業されるのは嫌だろうと声をかけて冷蔵庫をあさる。
温まるものの方がいいだろうが...
スープと温野菜...ポトフにするか。
あとは...

どうしたものかと考えると、少し落ち込んだような声が聞こえてきた。
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