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「ロイ!君の夢はなんだね?」










食事が終わって
薬を飲むのを無事確認できてから

食器を片づけたがるひとみをキッチンから追い出し、食器を片づけた私に

追い出されて少し落ち込みながら寝室へ休みに行ったと思っていたひとみが

いつの間にか戻ってきていてそんな質問を投げかけてきた。

全然似ていない私の声真似まで披露してくれて。
愛らしい人だ。

元気そうでよかった。
薬が効いているのか。

だが、今の質問は......





「ゆめ...?」

「うん!夢!」

「どうして急に?」

「聞いてみたくて!」

「君のその率直なところは気持ちがいいな。」

「そー言ってもらえてよかった。聞いてもいい?」

「......夢、か......」



そう言い、私の手をとりソファーへ促がしてくれる彼女には、慈愛の表情で満ちているようだった。
寝室へ向かうときの少し拗ねたような表情はどこへ行ってしまったのか...
口先を少し尖らせた顔も可愛かったんだが。

この表情と手から伝わるぬくもりに、どこか落ち着く反面
彼女の質問に心の混沌としている部分を掘り返されたみたいで、胸を締め付けられた。



繋がれたままの掌に力が入る。

嫌な顔一つせず握り返してくれるひとみの手の力に
一瞬波立った心が少しずつ落ち着きを取り戻していった。


心を整理するのにちょうどいいのかもしれない...


先ほど巻きつけていた布団を彼女にかけ
ひとみと繋がった掌はそのままに
空いたもう片方の掌を見つめながら
自分の心と向き合い
浮かんでくる言葉をポツリポツリと口に出した。





「夢か。夢とはなんだったか...




国の礎の一つとなって


皆をこの手で守りたい




そんな夢を持って軍に入り、
その夢のために一生軍で生きるつもりだった

しかしどうだ

イシュバールで私の若く青臭い夢や理想は打ち砕かれた



守るべき国民を守れなかった

守るどころか
支えてくれた部下を守りきれず数えきれぬほど死なせてしまい
それと比にならない程の、同じ国民であるイシュバール人を手にかけた
命令とはいえ人体実験にも手をかした



英雄だの人間兵器だのいくら言われようと
ただのゴミのような、無力な人間なんだということを思い知らされたよ

私が軍に属してからどれほどの人を守れてきたのか、甚だ疑問を感じる

できたとしても

たった一握りの
手をのばせば届く距離にいるようなごくわずかな者しか守ることしかできないんだろう

私などがアメストリスに帰ったところで何ができるのか、意味があるのか...
そんなことも考えたりした



......ただ、

いつまでも後悔に縛られているわけにはいかない

後悔を繰り返さんためにできることをする

自分がしてきたことを
この感情を
忘れずにエネルギーにしてやる

踏み台にして
力をつけて

ごくわずかだろうと
自分に守れるだけの、大切な人たちをなんとしても守っていく

君のおかげでそう思うことができた...」
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