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感情的だからこそ気付けることがある
感情的だからこそ感じられることがある
それと反対に
冷静になると見えてくるものがある
冷静にならなければ見えないものがある
それは
この数日で痛感したことだ
今も、そう強く感じている
今気付いたこと
それは
私がひとみの胸の中にいるということだ。
こうしてひとみの体が私に密着するのは今日だけでも何度目だろうか......
抱きしめてもいいかと問う私に「どんとこい」と返した彼女は
私の足の上に跨るようにして飛び乗り
そのまま包み込むようにして私を抱きしめてくれた。
闇に覆われて見えなくなっていた道が開けたことやひとみへの感謝と想いが溢れ
私は気持ちの赴くままに強く抱き返した。
ひとみと近い将来離れ離れになり、二度と会うことはなくなるだろうことにも覚悟を決め、ひとみの存在を感じ、刻みつけるようにただただ強く抱きしめた。
頭を冷やして考えられていれば、昼間布団の中での私とひとみの状態が反対になったような状態に気付くはずだ。
私の顔は丁度ひとみの首元から鎖骨にかけて埋められている。
私の顎の下には丁度二人に距離を作らないようにひとみの胸の膨らみがあって
想いを込めるように力を込めて抱きしめあっているから二人の間に隙間などない。
ひとみは薄着だから、顔の触れる場所は素肌で、体が触れ合うところもそのぬくもりを感じてしまう。
......
いかん。
これはいかん。
この体制はいかん。
今の状態は朝より性質が悪いじゃないか。
落ち着きを取り戻し冷静になったのに、またすぐに頭が、体が熱を持ち始める。
このまま目の前にある肌に唇を寄せたくなってしまう。
背中にまわしている手でこの人の頭を捉え、口付けたくなる。
そのまま......
いかん。
反応してくれるなよ。
今反応すればひとみの内腿にあたって気付かれてしまう。
それで意識してくれたかのように頬でも染められてみろ、湧き上がる欲求を抑えきれんかもしれん。
離れなければ。
だが、離れたくない。
私は子どもか......
だいたいひとみもどれだけ無防備なんだ。
私だから抑えられているものの、他の男にもしているのなら今に涙するハメになる。
下手したら涙だけではすまんぞ?
ひとみが苦しむのは見たくない。
これは一つ注意しておいた方がいいのだろうか......
「ひとみ?」
「なぁに?」
名を呼ぶと、力を緩めて私の顔を見ることなく聞き返してくるひとみ。
その声はまだ喜びを含んだもので、どれだけ自分のことでもない私のことで喜んでくれているんだと笑みがもれた。
やはり少しでもこのままで...
と願ってしまうものの、このままではと自らに言い聞かせ
背にまわしていた己の腕の力を抜き、背中をなぞるように下ろしてゆき、ひとみの腰に手をまわして引き寄せた。