いつまでも夢に溺れていれたなら

□「目が覚めてもそばにいてね?」
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「ロイっ!!!」


「!?」






叫び声のような切羽詰まった大きな声に飛び起きて周りを見渡すと

ドンッと胸に衝撃が走り

起きたはずなのにすぐにベッドに逆戻り。




一体何があったのか


今の衝撃はなんなのか




背中に感じるのは懐かしいような、柔らかいベッドの感触。
体全体に感じるのは心地いい重み。
首の後ろには何かがまわされているような違和感。
そして
私の視界には、白い天井しか見えない。

己の胸元に目を向けると、誰のかははっきりわからないが綺麗な黒髪をもった頭が目に入る。



誰だ??


ここは...??


わからないことだらけに頭を働かそうとするも、頭の中は霞がかかったようにぼやけている。



私は寝ていたはずだ。
ひとみに借りた和室で。
ひとみが用意してくれた布団に包まれて。

なぜこんなに背中に感じる感触が柔らかい?
なぜ畳のいい香りがしないんだ?


寝ていたからか暗さに慣れていた目をさらに凝らして現状把握に努める。


部屋の壁二面に渡る障子はどこへ行った?
あれから薄っすら感じる光が好きなのに。

視界にあるのは、
障子なんか一つもない、無機質な壁に床
一つあるんだろう窓は重いカーテンで塞がれているのか光は差し込んでこない。
差し込んでくるのは唯一ある襖ではないドアから。

ドアから差し込む光で、部屋にあるものが照らされる。
カーテンと私の間にあるのは小さなテーブルと黒いソファ。
壁の近くには本棚と扉...クローゼットか。


ここは和室ではないのか...?


...あぁ、違う。


懐かしい...


ここは...


ここはアメストリスの私の部屋だ。






あぁそうだった。




私は一人、




こちらに帰ってきたんだ。






では今私の上にいるこの人は...?

先ほど私の名を呼んだこの人の声はとても聞き覚えのある、忘れられない愛しい人の声に酷似していた。

昨日は酒でも飲んだのか?

飲んで酔ってあの人の声に似たこの黒髪の人を連れ帰ってしまったのだろうか...
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