いつまでも夢に溺れていれたなら

□「あんた...馬鹿じゃないの?」
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「ねぇエンヴィー。」

「なに?軽々しく僕の名前呼ばないでくれる?」






数ヶ月前、突如現れたこの女は僕たちのことを全て知ってると言いだした。頭がおかしいのかと思ったけど、なんでこんなとこまで軍属でもない一般人の人間入ってこれたのかわからなかったから、話を聞いてみると本当になんでも知っていた。

僕たちホムンクルスという存在。
それぞれの名前とか気質。
どうやってつくられたか。
お父様の存在。
この国で何が行われてきて、これから何がなされようとしているのか。

意味がわからなかった。

それだけのこと知っていてなんでここに来たの?
あんたなんか簡単に殺せるのに。
死にたかったわけ?
度胸があるの?
それともただの馬鹿なの?

「あなたたちのコマでいいから仲間にしてほしい」とか言いだすから、本当に意味がわからなかった。

「ずっとエンヴィーに会いたかった」ってどういうことさ...

知りすぎているこいつをすぐに殺さず監視することになって、その監視役に選ばれてしまったのが僕なわけだけど
なんでこんなに懐いてくるのか不思議でたまらなかった。

いつも後ろをついて歩いてくる。
嬉しそうに、笑いながら。
僕が人間を殺してる時だって、痛そうな顔してるくせに目をそらさず見てくる。

なんだっていうんだ。

なんで一緒にいるのが楽しいなんて思っちゃうんだ。
なんで守りたいって思っちゃうんだ。
なんで胸が苦しくなるんだよ...

なんなんだよこの感情......






「お願いがあるの。」



お願いとか、こいつが自分からおねだりしてくるのなんか『仲間にしてほしい』って会ってすぐに言いだしたあのとき以来初めてのことだから興味がわいた。

今度のお願いは何?
普段何も自分から望まないあんたが、一体何を望むっていうの?

気になるのに、やっぱり性格なのか素直に答えられない。



「ハァ?なんで僕があんたなんかのお願いを聞かなきゃならないわけ?」

「私をホムンクルスにしてほしいの。」

「...は?」



僕の耳、おかしくなった?
それともやっぱり、あんたの頭がおかしいの?
今、なんて言った?

僕の拒否の言葉なんてものともせず言いはなたれた願いに時間が止まる。

でもそれも、繰り返すように言われたこいつの言葉で動き出す。



「今は人間だけど、私も、ラースみたいにホムンクルスにしてほしいの。」

「......何言ってんの?」

「何って、言葉のとおり......」

「そーゆーことを言ってるんじゃない!なんでそんなお願いするのさって言ってんの!人間やめたいってこと!?」

「人間やめたい?そんなわけないじゃない。」

「じゃあなんでっ!」

「なんでも何も、やめたいわけじゃないけど人間よりもエンヴィーと同じホムンクルスになりたい、から...」

「わからない人間だなぁ...!だからなんでホムンクルスになりたいんだよ!!」



イライラが募ってくる。
せっかく人間に生まれたっていうのに、それをこうも簡単に手放そうとするこいつにイライラする。
そんな自分にもイライラする。
なんなんだよ...
なんなんだ...
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