いつまでも夢に溺れていれたなら

□これではよっぽど私の方が危険人物だな...
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「あはははははははは!笑えない!!」


「何が!?どうしたんだね急に...」






借りてきた本を読んでいると、家中に響いてるんじゃないかというような大きな笑い声が急に聞こえ、その声の主に問いかける。



「ロイ!丁度いいところに!ちょっと聞いてよ!!」

「一体何があったんだい?君がそんなに力いっぱい笑うなんて珍しい。」

「なんか名前占いみたいなのがあって、やってみたらびっくりしたの!」

「ほほう...」



普段
クスクスと口元を手で隠し上品に笑うこともあれば
ハハハとケラケラといい笑顔で楽しそうに笑うこともあるが

今みたいに
頬を引き攣らせて馬鹿笑いしている異様な光景を見るのは初めてで若干戸惑った。

少し興奮しているひとみはその原因が占いだと言うから、また女性らしいなと思った。
が、
それもすぐに否定された。



「ひとみは占いを信じる方かい?」

「んーん、信じてはいないんだけど、時々興味半分で見たりするかな。今日のはね、なんかある種の衝撃を受けて...
お題がね、『あなたが生まれてきた理由』なんだってー!」

「生まれてきた理由?それを占いなどに決められたくもないが...で、なんだったんだい?」

「さすがロイ!聞いてくれる??
私が生まれてきた理由は.........『新しい生物兵器の開発のため』だってー!!」

「...またひとみらしくないな。」



占いを信じない彼女がした占いは何とも重いもので、その結果は明らかに外れているだろうと言うのもだった。

人の痛みに敏感で、人のために涙を流せる優しい彼女にそんなことができるわけないだろうと。
一体何を考えているんだと。
現実からかけ離れた結果を鼻で笑ってしまいそうになる。
ひとみが笑うのもうなずける。



「でしょ?私そんなものが作れるほど頭もよくないから、早くもはずれてるんだけど...
んでね、ロイの生まれてきた理由も見てみたらね、『この世の悪と戦うため』なんだって!」

「ひとみは自分のことを過小評価しすぎだと思うがね。
それに、私だってそんな素晴らしいものではないしな。」

「そう?ロイこそ過小評価し過ぎだと思うけど...ロイのはロイらしいと思うんだけどなぁ...
あ!世界の悪と戦えって意味じゃないからね!あんまり重く考えないでね。
それでね、この結果から考えるとね、私、ロイに倒されなきゃいけないじゃない?」

「うん?」

「世界の悪の定義もいまいちわからないんだけどさ、生物兵器とか、きっと関係ない市民まで苦しめることになりかねないってかなるものを開発しようとしてるなんて私この世の悪の一つって言えるんじゃない?」

「しかし、私は君に傷をつけるなんてできんよ?できるはずがない。
それに戦うだけで私が必ず勝つとは書いていなかったんだろう?」



私がひとみに勝てるわけがない。
無抵抗で全面服従する域だ。
倒さなければならない存在になると言うのならいっそのこと
外に出られないように
私以外のものなど目に入らないように
檻に閉じ込めてずっと愛でていたい...

......

ハハッ
これではよっぽど私の方が危険人物だな...
笑えん。
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