朝なんかこなくていいのに
□「これも優しさの押し売りになるか?」
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ある日の朝
いつもの如くストーカーしに行ったのか姿をくらませた近藤さんを探すついでに見廻りをしていた。
道には所々にまとめてゴミ袋が出されている。
煙草に火をつけながら
あぁ今日はゴミの日なんだなと、今日が何曜日だったか思い出した。
最近休みなく働いてたからな
そりゃあ曜日感覚も狂ってくらァ
休みが欲しいとも思わねェが...
ハァと煙を口から吐き出した煙に目を向ければ
その煙の向こうに一人の女の姿が目に入った。
寝起きなのか
寝巻なのか部屋着なのかもわからないような服を着て
まだ冬だっつーのに裸足につっかけ
髪も綺麗に整えられていないままだ。
大きいゴミ袋を体を傾けて持つ様からはそのゴミが重いんだろうことがわかった。
寝坊でもしたのかねェ、あんなに急いで...
深い意味はないがなんとなくその女を視界の端に捉えたまま煙草休憩に入っていると、
いい天気だなとでもいう様に顔を上げた女の顔が目に入って驚いた。
元からあんな顔色なのか?
土みたいないろしてんぞ?
目のあたりは誰かに殴られたのかと思うほど、青を通り越して茶色も通り越して黒いんじゃねェかと思うほどだった。
よくよく見てみれば、急いでるようなのに歩き方に力が入ってねェ。
アイツ倒れんじゃねェかと気になったが、まっすぐは歩けてるしまだ大丈夫だろう。
煙草休憩だという建前で、若干、ほんの少しだけ気になるしそのうち倒れそうな女を、この煙草が吸い終わるまでは見ていようかと思った。
「あ、よかったらゴミ持っていきましょうか?」
そう思った矢先に聞こえてきた女の声に、その女の視線の先に目を向けた。
そんな顔色で誰にんなこと言ってんだと思えば、門の先の階段の上の方から、手摺とゴミを持って、ゆっくりゆっくり階段を降りようとしてるばーさんが見えた。
一段降りればゴミも一段下ろして置く。
足が不自由なんだろうことは明白だった。
20段以上あるだろう階段で、まだ上から5段も下りていない。
ばーさんが自分で行くのはまだまだ時間と労力がかかるだろう。
「いえそんな悪いです。いいですよ。」
「いえそんな、ついでですから気にしないでください。」
「でも...」
「ちょっとお邪魔しますね。」
断るばーさんを気にせず、その女は一言断り、開いてた門から階段を上ってバーサンから笑顔でゴミを預かれば、そのまま門をでてお礼を言い続けるばーさんに振り返った。
「ありがとうございます助かります。」
「いいえ、本当についでですから気になさらないでください。」
「ありがとうございますありがとうございます。」
「いえ本当に、大したことしてませんから。あ、門閉めておきますね?」
ゴミを預かったのにまだ階段を降りようとするばーさんは、門を閉めることを伝えた女が門を閉めたのを確認すると、嬉しそうな笑顔でまた感謝の言葉を続けて階段を下りていた足を止めた。
「本当にありがとうございます。」
「いえ、それじゃ失礼しますね。」
それを見た女は安心したように両手に大きなゴミ袋を抱えてまたゴミ置き場に向かいだしたんだが
オイオイ
お前そんな酷い顔色して何してんだ。
人助けしてる場合じゃねェだろうが。
どんなお人好しだ。
ばーさんの家から数歩、すがすがしい顔してやがったのに
ゴミ置き場の手前で一気に曇ったその表情になった女の元に
ヤバイ倒れるかと小走りで向かった。
「おい大丈夫か?」
「え?大丈夫ですけど、どうかしましたか?」
「ならいいんだ。今にも倒れそうな顔色して表情まで曇ったから。」
「あぁ、気にかけてくださったんですね。大丈夫ですよ、ありがとうございます。」
ゴミを地面に置いて、わざわざ丁寧にお礼言ってくる名もしらねェ女に、何故か溜め息がもれた。
いやいや、俺も一体何してんだ。