白銀に輝く空
□其の一
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蝉がうるさい・・・夏。
夏休みのまっただ中、お盆で母親の地元に帰ってきた花門家一行は京都に来ていた。
青波は仏頂面という表情の名称がぴったりの顔をして、姉の亜紀の我が儘で今まで京都に来るたびに連れて行かされている、新選組記念館に、今年もまた来ていた。
(ったく・・・なんで毎年きて飽きないかなー・・・いい加減にしろよな−・・・)
いきたいのなら、一人でいけばいいものを、毎年、青波を連れて行くのだ。
連れて行くといっても、毎回、回るのは別々なのだが・・・
(別々で回るのに一緒に行く必要がどこにあんだよ・・・?)
すり切れ気味のGパンのポケットに手を突っ込んで、完全なる蟹股で展示室を歩く。
まわりはいろんな観光客がいるが、ごった返しているというほどではない。
むしろすいてる方だろう。
新選組記念館といっても、そんな大規模なものではない。
すこしだけ、資料の展示や、当時の風景やらを再現したものだけ。
飛び抜けて有名なものとか、別にあるわけではない・・・が姉はここが好きなのだ。
(ほんとに何がいいんだか・・・)
だったらもっと詳しく大規模な記念館に行きたいよ、などどぶつくさ言いながらブラブラしていると、ふと、足下の床がガラス張りになった。
つと、目線を足下にやると、『浪士の密会』と書かれたテープ越しに、いろりを囲んだすすけた着物を羽織った侍たちの人形が額をつきあわせている風景が見えた。
(せまっくるしいとこでやるんだなー)
とその展示物を眺めて通り過ぎようとしたところ、ちょうどいろりを過ぎたあたりだろうか・・・なにやら、浮遊感に襲われた。
「は??」
胃がふっと浮き上がる感じがし、足下の支えがなくなった。
「え??」
頭が状況についていく前に、青波は下へと落ちていった。