白銀に輝く空
□其の四
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「おはよう。青くん。」
朝、青波が、キエの声で起こされた時間は結構早かった。
時計がないのではっきりとはしないが、まだ朝の4時・・・5時あたりだろう。
しかし、こちらも夏だ。
そんなに早い時間にも関わらず、外は明るい。
違うところといえば、夏なのに全然熱くないところだろうか。
「む・・・おはようございます。」
まだ眠い目をこすってムクリと上半身だけ起こす。
そんな青波をみて、キエはくすりと笑った。
「??」
「早いことしないと、春次さんに叱られますよ。」
「げっ!!すぐ行きますっっ」
朝っぱらからあの怒髪天を突きたくはない。
それに、今日は春次のいう、仕事の最初の難関だ。
「入隊しに行かなきゃならんのだよな。」
さっさと布団をたたんで、押し入れに突っ込むと、タンスを引っ掻き回して、新しい小袖に着替える。
といっても、汚いのは変わりないが・・・
ばたばたと昨日引きずり回されたときの記憶の断片を辿って、食事をするであろうと予測される場所に行きついた。
春次はもうすでに来ていた。
「お、おはようございます。兄さん。」
「む。おはよう。」
(なんでこの人はまだ若いし、顔も綺麗なのに、こんな年寄くさくふるまうんだろーな・・・)
「遅れまして、すみません」
心の中ではちょっと失礼なことを考えながらも、青波はおとなしく席についた。
「今日は大切な日だ。入隊したら、もう花門との連絡はとるな。いいな。」
「あ、はい。」
(連絡取るもなにも・・・そんな必要がどこに・・・)
ひねくれたことを考えながら、いただきます。と手を合わせて、朝餉に端をつけた。
「ん・・・んまい。」
思わずぽそっと呟いてしまった青波を、ぎろりと春次が睨む。
「う、あ、すいませっ」
「いいのよ。ありがと。やっぱり青くんはいい子ね・・・記憶なくしたっていう割に、いつもの朝と変わりないわね。」
炊事場のほうから、キエが顔を覗かせてにこりとほほんでくれた。
「あ、はぁ。。。」
ちょっと気の抜けた返事をする青波に、春次はため息をついた。
「まったく・・・これだから心配だ。お前は良くも悪くも素直すぎる・・・間者にむいているのかどうか・・・。」
「え、でも、昨日うってつけみたく言ってたじゃないすか」
ずるずるっと味噌汁をすすって、青波は春次の言った言葉に反応した。
「当たり前だ。桂さんの頼みだ。ああいって聞かなくてどうする!?だいたい、お前にもこれくらいしてもらわんと、いつまでもフワフワしているわけにもいかないだろう。」
(なんだぁ?さすが兄貴だなー)
聞くところによると、どうやらこの世界の花門青波はぷー太郎のようだ。
「まぁ、とにかく、嘘はつきとおせってことですよ。ね?あなた?」
「ま、そういうことだ。くれぐれもバレるな。おまえなんか、バレればそこで終わりだ。」
(・・・心配してんのかしてないんか分からん言い方だなー・・・)
そっぽを向いていう春次の横顔を見ながら顔をしかめる青波に、キエは笑いをこらえた。