白銀に輝く空
□其の七
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青波が新選組隊士として、きちんと認められて、数日・・・
いまだ、青波の傷は癒えていなかった。
歩けるようになったものの、激しい動きをすれば、傷が開く、といわれ、トイレに行くくらいしか歩かない。
(なまっちますよなー・・・さすがにこれはかかりすぎだろ・・・)
動けないことにだんだんとイライラしてくる。
たまに同年代の隊士が見舞いに来てくれるが、騒ぐだけ騒いで帰って行くという感じで、正直、うるさいとしか思わない。
(ただ・・・沖田さんと土方さんが・・・)
なぜか二人とも毎日のようにやってくる。
いや、毎日だ。
でも、二人とも絶対にかぶらない。
別々にやってくる。
(あの二人は別にうるさくはないんだけど・・・一応上司だし・・・気まずいんだよなー・・・)
今日ももうそろそろ沖田が来る頃だろう。
ひたひた・・・
静かに迫ってくる気配がする・・・
(あ、来た。)
「青波。あけるよ。」
「はい。」
沖田はあの日から、周りに誰もいないときは青波のことを名前で呼ぶ。
(別に悪い気はしないんだけどさ・・・)
それに違和感をかんじてどうも居心地が悪い。
沖田が襖をあけて、すっと入ってきた。
「どう??怪我の方は??」
「あまりよくないみたいですが、治ってはきてます。痛みも大分減りました。」
「そう。頭は?」
「まだ少し痛いですけど、大丈夫です。」
「無理しないでね。」
「ありがとうございます。」
そんなお見舞い常套句な会話をして、沖田はにっこりと笑うと、
「土方さんもお見舞いにきてるよね??」
「あ、はい。」
「どんなかんじ??」
「別に・・・普通に怪我のこと聞いて、そのまま帰っていかれますけど・・・?」
「そう。じゃ、なにも他には言われてないんだね??」
「はい。」
「そう。」
また、ひときわにっこりと笑うと、俺の頭に手をおいた。
そしてワシャワシャと頭をなでる。
「・・・なんですか??」
「君の髪、さらさらだね。」
「・・・ありがとうございます。」
「・・・」
「??」
急に沖田が黙った。
頭の上の手も止まる。
「どうしたんで・・・っ」
・・・・・・・・・・・・・・・
「じゃ、早く治してね。」
沖田は颯爽と出て行った。
(くそっまたやられたっっ)
どうしたものかと沖田の顔を見た瞬間、青波はまた、沖田にキスされたのだ。
ごしごしと袖で唇をこする。
(何回キスすりゃ気が済むんだ!)
正直のところ、ほとんど、見舞いに来たら、必ずといっていいほどだ。
何度か察して退けたこともあったが、そのときは決まって、不機嫌で帰るのだ。
(不機嫌なのも勘弁してほしいよな・・・)
はぁ、とため息をつくと、また、廊下をあるく静かな足音が聞こえてきた。。。