白銀に輝く空

□其の三
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「え、あ、ちょっと・・・待っ・・・」



青波の声もきかず、春次はさっさと引っ込んでしまった。



当惑した青波は、しかたなく、まだ近くにいたキエに質問を投げかけてみた。


「あの・・・ここって、俺の家なんでしょうか・・・?」

思いもよらない質問だったのだろう。
でも、キエはニコリと笑うと、気さくに答えてくれた。

「本当に記憶をなくしちゃってるみたいね。ええ、ここは花門のおうち、あなたのお兄様のおうちで、おなたはここでお兄様の商売のお手伝いをしているの。」

「商売・・・?」
「えぇ、呉服問屋よ。表向きはね。」
「表向き??」
「そう、本当は春次ぐさんは攘夷の一角をになっているの。だから、表向きは呉服問屋で情報集めをして、攘夷の活動は劇団で行ってるの。団員はみんな攘夷浪士だから、幕府のお偉方が見物に来たときに・・・とかね・・・。」


そう説明しながら、キエは悲しそうな顔をした。

「でも!!」
悲しそうだった顔をぱっと明るい表情にして、キエは明るくいった。

「春次さんは劇団も本当はむいているのかもしれなの。おどりはとても綺麗よ。」

にっこりと明るい笑顔で兄の自慢をするこのひとは、本当は攘夷なんてやってほしくないのだろうな・・・このご時世、そんなことして、いつ命をおとすかしれない。

青波はこの可愛い兄のお嫁さんは、兄のことが大切なのだな・・・と、状況が呑み込めていない頭でそれだけはわかった気がした。



「じゃ、あなたの部屋、わからないでしょうから、案内するわね。」


キエは青波ににっこりとわらいかけると、手招きして青波を部屋まで案内してくれた。


「ここがあなたの部屋。明日はまた大変そうだから、早く寝なさいね。」


「はい。ありがとうございます。」
青波は笑顔でこたえる。

その顔を見たキエは、ふと、考え込んだ風をみせ、ちょっと真面目な顔になると、

「本当に、引き受けたの??」

と心配そうに聞いてきた。


(え・・・?あぁ、あの話・・・。)


「えぇ、まぁ、仕方ないですよ。何が何だか、記憶が戻らないかぎり、よくわかりませんが、引き受けたんですから。」


本当はしごとをまっとうするきなどさらさらないが、青波はここは安心させなくては、と真面目な好青年ぶって少し不本意だけど、仕方がないという気持ちでいる。という設定でいくことにした。


「・・・ほんと・・・いいこなんだから、、、基本的に、危険だとおもったら、無理しないでね。仕事なんて言っても、ほんとに命捨てるようなものなんだから、、、命は大切にしてね。」


青波の答えに情けないような顔で言ってくれた。


(このひと・・・本当に兄が心配なんだなー)


青波はその顔をみて、ひたすらそう思った。
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