白銀に輝く空
□其の四
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「そいじゃ、いってきます。」
かるく侍風にしあげた青波を、裏の昨日入った木戸からキエだけが見送っている。
「気を付けてね。ああいってるけど、春次さん、本当は青くんのこと心配なんだからね。」
またあの可愛らしいほほえみでポンポンと青波の肩をたたく。
「はい。わかってます。なんとか、命を粗末にしないように頑張ります。」
青波もにっこりと答える。
「本当に、死んじゃだめよ。」
すこしだけ涙が浮かんだ気がしたが、そんなことは気にしないでおこう。。。と青波は新撰組の屯所にむけて歩き出した。
町は朝はまだ早いが、さすがこの時代・・・みんな早起きだ。
もう朝の市場出来上がっているようだ。
(にぎやかだなー・・・現代なら、こうはいかない・・・こんな時間帯、走ってる車もマチマチだし、人通りなんて、ジョギングやら散歩やらしてるオジサン、オバサンくらいのもんだしな・・・。)
それになにより・・・
(空が・・・綺麗だ・・・)
排気ガスのないこの時代、大気汚染なんてありえないのだから、空気が澄んでいるのは当たり前だ。
となれば、空の青さは現代と比べ物にならないくらいに美しい。
これから危険な仕事をしに行くとは到底思えない心持だが、せっかくだから楽しんだ方がいいだろう・・・と青波はそのままのテンションでにぎわう朝の街をあるいた・・・
とそこへ・・・
「待てっ」「こそどろっ」
ばたばたっ・・・足音とともに、騒がしくなったかと思ったら、青波の左側の路地から、急にみすぼらしい恰好をした男が飛び出してきた。
ドンッとその男は青波にぶつかると、かるくしりもちをついた。
(こんな貧相な俺にぶつかっただけで倒れんの??)
びっくりして、倒れた男を覗き込むと、腕に綺麗な女物の着物を抱えていた・・・
(え??食べ物じゃない??)
こんな身なりなのだから、空腹のあまりに・・・というのが妥当だと思っていた青波には驚きだった。
「ありがとうございます。若いお侍様!!」
こんどはその道から綺麗な恰好をした男が出てきた。
お手伝いさんかと思われる女もそれに続いてやってきた。
「あ、はぁ・・・。」
青波は目の前で大事そうに着物を抱える男の腕からその着物が取られのを見ていた。
「ったく・・・この薄汚い野郎め!!てめーみてぇなやつが買える代物じゃねんだよ!」
青波にお礼をいった感じとは打って変わった様子でその男をののしる男・・・
「おゆるしくだせ・・・それを・・・娘にと・・・」
消え入りそうな声でみすぼらしい男はポソポソと呟いている。
「・・・」