白銀に輝く空
□其の五
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青波は真太のいない部屋で一人、布団に横になっていた。
寝ようと思うのだが・・・沖田のいったことが気になって、なかなか眠れない。
(もしもあの会話が聞かれていたら・・・真太と俺のことがばれていたら・・・)
その状況下で怪しい動きをすれば一発で粛正させるだろう。
あの沖田の言葉がある種の牽制であるのだとすれば・・・マークされているのは間違いない。
(真太・・・どこ行ってんだ・・・桂と連絡なんか・・・とるんじゃないぞ。)
昼の見回りでのだんご屋でみた、真太の表情・・・
(お前のきもちもわからんでもないけどさ・・・)
命を大切に・・・キエの言葉がよみがえる。
青波はあのときに自分は命を粗末には絶対しないと思った。
だからもう、間者としての仕事をするのは、春次の面目をつぶすことになるが、あきらめた。
でも、それは実際。青波と春次には本当の兄弟というつながりがないからであって・・・・
家をつぶされた真太は、こんな気持ちではいられないだろう。
(親父が殺されてるんだから・・・当たり前だよな・・・)
考え事をしている間に・・・どんどん夜は更けていく・・・
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ちょうどその頃の副長室・・・
そこには、沖田と土方の姿があった。
「で、どうなんだ。新人隊士の様子は?」
机に向かって筆を動かしながら、土方は後ろに座る沖田に訪ねた。
「ま、片方にはそれとなく警告しましたよ。でも、もう片方は・・・」
「そうか。まぁ、動けば斬るだけだ。」
「容赦ないですねぇ。土方さんは。」
「容赦がないのはお前もだろ。」
「そうですか??鬼の副長。」
「うるせぇ・・・。ところで、聞いてなかったな・・・そのお前の間者についての情報・・・どこから仕入れた??」
「・・・姉からですよ。」
「ミツさんが??」
「はい。姉の旦那の妹が、姉に相談してきたらしいです。夫の弟が・・・ってね。ま、このことは内密に、俺だけで処理できたらっていわれてたんですけど、相手が桂なんで・・・」
「あぁ。そうだな。他にもつつきゃ、ゴロゴロ出てくるだろう。」
「えぇ。原田さんが、一人見つけたそうです。」
「原田が・・・で?」
「さっきの土方さんと全くおなじこといってましたよ。」
「”動けば斬る”ってか?」
「はい。」
「ま、それが賢明だろう。」
「それじゃ、そっちの新人は任した。」
「はい。それじゃ、土方さん、なれない事なんかしてないで、さっさと寝てくださいね。」
「っ・・・さっさと行け。」
むっとした顔になって、土方は沖田を部屋から追い出した。
机の上には、土方の読んだ句が書かれた紙が置いてあった・・・。