白銀に輝く空
□その十四
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「申し訳・・・ありませんでした。」
治療を終えて、寝台に上体だけ起こした格好でいる青波の前で深々と頭を下げるタヨ。
「いや・・・うん。まぁ、事情がよく飲み込めてなかった俺に非がある気がしてならないから、はなしてくれない?」
刺されたことは純粋に痛かったし、ごめんなさいで終わることでもないとは思うが、あの場面では深追いした自分がタヨにとってはアクシデントだったのだと思ったのだ。
「・・・いえ、私がちゃんと伝えられていれば・・・。」
悔しそうな顔をするタヨだが、青波は手を伸ばしてタヨの頭に手をのせる。
「とりあえず話して、それから俺が謝ってもらうべきなのか判断するから。」
「はい・・・。」
と消えりそうな声でタヨは話しだした。
自分の父は攘夷の信念を掲げていること。
それが嫌で家をでていること。
できるだけ関わらないようにしていた新選組とあの祭りの一件で関わってしまい、青波といい仲になったことはバレないつもりでいたが、父親にバレてしまったようで、それを利用する動きがあると気がついたこと。
「つまりー、あの祭りの日にみんな逃げちゃったのはそれが原因?」
「はい。私の家の事情をあの時一緒にいたこたちは皆しっていたので、私のことを気遣って、あの場所からはなれてくれたんです。でも・・・」
「結局、タヨちゃんは俺と関係をもってしまった。」
「はい。私は祭りで良くしてもらって、もうそんなの考えなくてもいいかなーなんて思ってしまっていて・・・」
「バレるわかけないと思ってたらバレて・・・今日の連中は?」
「あの二人は父の用心棒もしている浪士です。腕は立ちます。青波さんの剣術も劣ることはないと思いますが、やりあってもしものことがあるくらいなら・・・わたしが・・・」
(思った以上にキモったまだな・・・)
そのほうが青波の怪我の負担が減ると思ったから、刺したということらしい。
たしかにそうだったともいえる・・・が・・・
「このこと、隊には黙っておくね。」
「え!?」
「タヨちゃんが変なことに巻き込まれても事だし、だから、今日は俺と君のあいだだけで起こったゴタゴタ。それから、君が俺を刺したことは逆にお礼をいうね。君のおもったとおり、あの二人に俺は敵わなかった。」
「いえ・・・ごめんなさい。」
「謝らないで。俺の方が未熟だった。それで・・・俺たち、もう関わらないでおこう。」
「え・・・」
「さっきも言ったけど、やっぱりこれから君が嫌なことを強制されることになるのは避けたい。・・・フジと、破談にしたのもややこしいことになるのが嫌だったんでしょ?」
「!!・・・はい。」
「うん。だから、ね。」
「はい。わかりました。わたし、青波さんのこと本当に好きでした。」
「・・・ありがと。俺も、タヨちゃんのこと、好きだったよ。」
「はい。じゃ、これで、花門さん。さよなら。」
「はい。さようなら。」
タヨは静かに病室を出て行った。
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