白銀に輝く空
□其の十五
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「花門、どーした?」
座り込んだまま嗚咽をかみ殺してないていた青波の頭のうえから、こえが降ってきた。
ドキっとして泣いていることも忘れて顔をあげると、近藤が見下ろしていた。
「おまえ…」
顔をあげた瞬間に近藤の表情で、自分の頬が濡れていることを思い出す。
「あ…すぃません。」
ぱっとうつむいて、ゴシゴシと涙を拭う。
「お前は…まったく…こい。」
座り込んで顔をこする青波の腕をつかんで立たせた。
「局長、どこへ…」
腕をつかんだままずんずん廊下をすすむ近藤はだまっている。
屯所の大分奥。
青波もきたことのなかった場所。
ある一室のまえで、近藤は立ち止まると、ガラッと障子をあけると、中に青波をひきいれた。
「わっ、な、なんなんですか…」
倒れこむ勢いでひっぱられて、青波は近藤に抗議の声をあげる。
「ほんとに、お前にあの二人がいれこんでも仕方ないのかもしれんな!」
日もおちてきて、薄暗い部屋のロウソクに火をともして、近藤は苦笑いでドッカリとすわった。
「花門も座れ。」
座布団を勧められて遠慮がちに腰をおろす。
「おまえ、あの二人が異常に執着してることにはきづいているのか?」
「あのふたり…って、副長と沖田隊長のことですか?」
さっきから近藤のいうあの二人がだれなのか、確認する。
「そーだ。それ以外に誰がいる?」
「そーですね…」
苦笑して同意する。
「でも、確かに、自分はよくご心配をおかけしますが、それは自分が未熟なせいで、俺にお二人が執着しているからというのは、どうなんでしょうか?」
首を傾げて問う。
「自覚してないのか…」
近藤はふっと口の端で笑って、ボリボリと頭をかいた。
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