★SS501★

□Distance - 君とのキョリ
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ヨンセンが練習中に怪我した時、
僕はいつものカフェにいて、
昨日買った本の続きを読んでいた。

今話題のミステリー小説。
物語は緊迫した場面を迎えていた。
主人公の背後に何者かが忍び寄る…

犯人なのか…それとも…

ドキドキしながら次のページを捲ろうとした…

まさにその時。

突然テーブルに置いていた携帯がブルブルと震えて、
それに驚きすぎて体全体がビクッと大きく動いてしまった。


…恥ずかしい。


チラリと周りを確認して、そっと携帯を手にとる。
フウッと息を整えてから出ると、聞きなれたマネージャーの声。

だけど、いつもより焦ってる感じで…
それで何だか嫌な予感がした。
おまけに、さっき読んでいた小説の場面も思い出してしまう。


『ヨンセンが…練習中に怪我して…今、病院に…』


一瞬、その言葉の意味がわからなくて「え…」と無意識に声がでた。


ヨンセンが怪我…?

病院って…


『キュジョン?聞いてる?もしもし…??』


「あ…はい、聞いてます…スミマセン…あの、どこの病院ですか?」

少しだけ思考が停止したけど、マネージャーの声で我に返って、慌てて病院の場所を聞いた。

「わかりました!僕もすぐ行きます!!」

携帯を切って、急いで店の外へ飛び出した。

切り際にマネージャーが何か言いかけたような気もしたけど…

もう居ても立っても居られなかったから。

病院に運ばれるなんて…どんな大怪我したんだろう…
マネージャーの動揺した声を思い出して不安な想像が大きくなる。


もしかして、意識不明…とか。


想像すればするほど不安になって、怖くなって…
いつもフニャリと笑うヨンセンの顔が浮かんでは、また不安になった。

だから、病室のベッドの上でマネージャーと談笑しているヨンセンを見て全身の力が抜けるほどホッとして、
それと同時にさっきまで想像していたヨンセンとのギャップに思考回路がついてこない。


え…

あれ…??


ものすごい勢いで病室に飛び込んできてハァハァと肩で息を切らす僕を
ヨンセンは驚いた顔で見て、それからキョトンとした顔で首を傾げた。


「ヒョン…無事…なの…??」


「……無事……じゃないけど」


僕の質問にヨンセンはギプスをした右手を見せながら言った。

「あ…いや、その…。あぁ…そっか…なんだぁ…」

「…なんだぁ、ってなんだよ」

自分が想像していたのよりも『大したことない』状態のヨンセンを見て、ホッと胸を撫でおろして思わず漏れた言葉。
その言葉にヨンセンは少しムッとしたように口を尖らせた。


「だって…ヒョンが怪我したって…マネージャーが慌ててたから…」

「…本人は元気だって言ったのに」

言い訳のように言葉を並べていると後ろから声がした。
振り向くと、さっき電話をくれたマネージャーだった。

「え?」

「キュジョン、突然電話切っちゃうから…」

「…あ。…スミマセン」

「そんなに心配だったの?愛されてるね〜ヨンセンくんは〜」

笑いながらマネージャーは買ってきたジュースをヨンセンに手渡した。

自分の早とちりだと気づいて途端に恥ずかしくなる。
それに、今のマネージャーの言葉。
顔が赤くなるのが自分でもわかった。


「心配し過ぎなんだよ、キュジョンは」

マネージャーにからかわれたヨンセンが、また口を尖らす。




だって…


すごく、心配で…


心配で…



僕の…



大好きなヒョンだから…





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