★B1A4★
□B1A4★西遊記
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さて、そこへ通りかかった若者が二人。
こんな岩山に猿が下敷きになっているとは露ほども知らぬご様子!
のんきに桃を頬張っております。
「この桃、ホントに美味しいね〜!」
「さっきの村で分けてもらえて良かったな」
久しぶりに聞く人の声。
桃?桃って言ったか??
うなだれていた頭を勢いよく持ち上げたバロの視線の先には、美味しそうな桃を食べる若者二人。
「ヒョンの必殺スマイルのおかげだよ〜」
「ふふ、そう言われると照れるなぁ〜」
すぐ目の前にいるのに気付かずに通り過ぎようとする二人組を呼び止めようとするものの、長いこと使われていなかったバロの喉は思うように動いてはくれないのであります。
「…お、おい!ちょっと待て!」
やっとの思いで絞り出した声。
少し擦れた声。
突然降って湧いたその声に二人組はビクッとして、それから恐る恐る振り返りました。
「な…なに??今の???い、岩がしゃべったの????」
「いや、そんなはず…ないだろ…空耳かも…」
ビクビクしながらもキョロキョロと辺りを見回す二人組に、少しキレ気味に発したバロの第二声は完全に元の状態に戻っておりました。
「ここだよ!ここ!!!岩の下!!!!」
低めの怒鳴り声に、またまたビクッとしたのは、ちょっとポッチャリした少年。
ビクビクしながらも両手に持った桃は離さないのであります。
「…ん?あれ?あ〜!人がいる!」
ちょっとおっとりとした口調で背の高いメガネの少年が指をさすと、ポッチャリ少年もやっとその存在に気付いた様子。
長いこと岩に挟まれてたおかげで、バロの手も顔も髪の毛も薄汚れていて、遠目で見たら岩そのもの…気付かれないのも仕方がないかもしれません。
「なぁ、頼むから…その桃、1つ俺にもくれ!」
そう言って、すがるような目で少年が持っている桃を見つめるバロ。
猿族の王として君臨し、《斉天大聖》という立派な称号まで手に入れたってのに、こんな見ず知らずの旅人に物乞いするなんて…情けない!
…なんて言ってる場合ではないのだ。
半分プライドを捨てたバロが必死に訴えていると、ポッチャリ少年が何か考えているみたいに、小首を傾げてバロをじっと見つめていました。
なんだよ!くれるのかくれないのか、さっさと決めろよ!
う〜んと小さくうなり続けるポッチャリ少年に、バロがイライラし始めたその時…
もしかして、と驚き顔のポッチャリ少年が発した次の言葉にバロも驚いたのであります。
「う〜ん?あ!!あれ???お前…チャ・バロだろ!!」
「え…」
何で知ってんだ???
そうか…やっぱ、下界でも俺って有名人なのか〜
照れるな〜ハハ〜ン♪
勝手に想像してニヤニヤしちゃった岩猿チャ・バロ。
そんなバロにポッチャリ少年は更に予想外の発言をするのでありました!
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