novel*h

□Do you love...?
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「おうっ斎藤っ!今日も、あっつかったなー!!」

昼間のうだるような暑さも、
ようやく落ち着いてきた夕方頃。

たまたま道場に居合わせていた
斎藤に、俺は声をかけた。

「あぁ…。こんな暑さが連日
続くと、さすがにこたえる。」

斎藤は、まったくだ、という
様子で、竹刀を片付けながら返事をする。


「それはそうと、なぁ斎藤。
今日は、いい酒が入ったんだ。
俺の部屋来て飲まねぇか?」

俺は、斎藤がくいついてくるように、「いい酒」を強調しながら言った。




実は最近、変だとしか思われないだろうが、
…斎藤が、気になってしょうがない。

俺には衆道の気なんか無かったし、
ましてや男を気にしたのだって生まれて初めてだ。

惚れたのは、あいつの、
何に対しても真っ直ぐなとこ。

最初は気に入らなかった、
真面目すぎるとこ。

そして、時折見せる、笑顔。


そんな自分に気が付いてから、
平助達から誘われても島原には行かなくなり、

そのかわり、しょっちゅう
酒を買ってきて、斎藤を誘うようになった。


しょうがねぇだろ?

だって、少しでも、斎藤といたいんだもんよ。

…なんて思う俺は、相当重症か?




ふむ……。と、斎藤は、少し
考える素振りを見せてから、

「あぁ、明日は非番だし、付き合ってやろう。」

という答えを出した。

次いで、

「それにしても、最近あんたは、よく俺を酒に誘うな。」

と、どこか疑っているような
視線を向けながら言う。

「違…っ!べつに、なんか
企んでるわけじゃねぇよ…っ!?」

俺は、変な誤解をされたくなくて、
必死になって首を横に振った。


企んでるわけじゃない。

下心は…ある…けど…。



そんな俺を見て、ふいに、
斎藤がくすりと笑う。



どくん…

ほら、まただ。
斎藤の笑顔を見る度に、
心臓がはねるんだ。



「分かっている…。
では、湯浴みが済んだら、
あんたの部屋に行けばいいのか…?」

未だに、口元に右手をあてて
くすくすと笑いながら、
だいぶ身長差のある俺を見上げて、
首を少しかしげた。







…どっくん…!!

なんだっ!?
今、心臓があり得ない動きしたぞ!?


つーか、その角度、反則だろ…っ!!



つい『かわいい』と思って
しまい、赤くなった顔を手で隠す。
すると斎藤が、きょとん、
とした表情で見つめて、

「どうかしたのか?」

と訊いてくるもんだから…
焦って「なんでもない!」を
連呼し、じゃあなっ、と
短い句をついで、その場から
逃げるように去った。
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