novel*h

□好きの気持ち
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「なぁ平助ー!
聞いてくれよぉー!!」


「わわっ!泣きつくなって!!新八っつぁん!!」



始まりは、ここだった。













「…ってゆーわけ!ほんとは、口止めされてるんだけどなぁ!」

「………なるほどな…。」



実は、数時間前、藤堂平助は目の前の男…斎藤一の
恋人である永倉新八に、ある悩みをうち明けられた。

それは…



「つまり、新八への、俺の気持ちが感じられない、と。」


そうなんだって!
と、藤堂は少し困ったように言う。


「昨日もさぁ、大変だったんだぜー?
あの新八っつぁんに、泣きつかれて!
俺、潰されるかと思った!!」


そう言って、へらへらと笑う藤堂を目にして、斎藤はさらに困った顔になった。

「し…しかし…、だからといって、どうすれば…。」

「一君は、新八っつぁんのこと、ちゃんと好きなわけ?」


藤堂は、今度は真面目顔になって訊く。



「すっ…好きでもないやつと、あ……あんなこと……するか!!」


すると、斎藤は、真っ赤になって言い返した。

あんなこととは、つまり、情事のこと。





そう、斎藤は既に、永倉と夜を共にしているが、その最中以外の斎藤の態度が、
恋人関係になる前とあまりにも変わりないので、現に永倉は藤堂に相談した、ということだ。


藤堂は藤堂で、新撰組の十番組組長である、原田左之助と「デキて」いる。


彼らの関係は、お互いに知り合っていること。

もっぱら、永倉から相談を受けるのは、藤堂の役目なのだが。





「俺は…、ちゃんと好きだ…っ。新八のこと…!
…どうすればいい?
どうすれば、伝わる…?」


顔を、これでもか、という程赤くして、一生懸命に言葉を紡ぐ斎藤を見て、


(これだもんなぁ…)

きっと恥ずかしくて、自分でも気づかないうちに、そっけない態度をとっちゃうんだろう…。



と、思う藤堂に、なにか、人助けをしてやりたいような気持ちが芽生える。

そうして。


「なあ!一君!!
こんなこと、したことある…?」


にっこりと笑って、その続きの言葉は、斎藤の耳まで口を運び、直接囁き入れた。
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