浅い夢−鳴門−

□幸せな夢
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「ばかっ・・・!」

溢れ出る殺気を抑えきれずに、後輩が駆け出す。
振り向く標的に、後輩はクナイを投げつける。

私が一人で行くはずだった任務に、後輩の奏が自分も行きたいといったことは驚きだった。
任務に禁物な私情を、私も奏も、よくわかっていた。

その上で連れて行ったのだ。

仕方は、なかった。
今回の標的は、木ノ葉を抜けた忍。
そして、奏の親を殺した忍だった。

投げつけたクナイが、すぐに落とされる。
奏の昂ぶった感情に、標的は口を開いた。

「邪魔をするな。」

木ノ葉の額宛に引かれた一本線。
その下から見える鋭い瞳が、奏を睨み付ける。
奏は肩で息をつくようにして、標的を睨み付けた。

私は、今日はカカシの誕生日だったな、なんて考えながら木の陰からそっと標的に近付く。


あと、もう少し。


そんなとき、奏が動いた。
奏の力じゃ、相手にはまったくかなわない。

私の心が、何かを思う前に、体が素早く動いた。

奏の持ったクナイを標的が叩き落し、鋭い氷で奏の体を突きぬくはずだった。
その前に、私が奏を突き飛ばした。

熱くなる胸。

体の中の何かが、体中を駆け巡り、私の口から吐き出された赤色の何かは、涙と混じった。

そんな私から氷を抜くと、抜け忍は素早く去っていった。

そして、私はゆっくりと地面に倒れた。
ぽつり、ぽつりと頬に雨が落ちてくる。
そして、涙と交じり合い、頬を伝う。
口から溢れ出る血と、胸から感じる痛み。

――ああ、死んでしまうのかな。

「・・・い、先輩!!」

奏の苦しげな顔が、ゆっくりと私の視界に入る。
雨と同じように、ぽつりと奏の涙が私の頬に落ちる。

「・・・なみ、・・・だ・・・は、禁物・・・よ・・・・。」

ちゃんと喋りたいのに出てきた声は、絞り出すような声。
そんな私の言葉に、奏はもっと泣き出す。
そして、視界が狭くなっていく。

「先輩・・・、先輩!!だめです、おきてください!」

奏が、私を一生懸命呼ぶ。
その言葉、私もいったことあったなぁ・・・なんて考える。

たしか、あの後先輩、死んじゃったっけ。
じゃあ、私も死んじゃうのかなぁ。

視界が真っ暗になる。
瞼をとじて、強くなった雨の音と、奏の涙で揺れる声が遠のく。

浮かんできたのは、カカシの優しい笑顔。
今日、カカシの誕生日なんだよね・・・。

祝いたかったな・・・。

カカシに買ったプレゼント、壊れてないかな。

私が死んだら、このプレゼントは届くのかな。

カカシは、一人で待ってるのかな・・・。

ごめんね、カカシ。

私、もう寝ちゃいたいよ。

起きたら絶対に、カカシの元に駆けつけるから。


おめでとうっていうから。



今だけは眠ることを許して。

ごめんね。
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