浅い夢−鳴門−
□君から逃れられない
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ため息を一つついて、靴を履く。
そして、ドアノブに手をかけて、もう一度ため息をつく。
そんなとき、ふと後ろから声が聞こえた。
「仕事・・・?」
低い、優しい声。
もう二度と私の名を呼ぶこともなくなる声。
愛情はなくなったはずなのに、涙が溢れ出た。
「・・・刹那?」
そうやって、私の名前を呼ばないで。
全部気づいてるくせに、全部わかってるくせに。
カカシの静かな視線に私はそっと首をふった。
「ごめん、なさい・・・。」
涙で声が震える。
最後ぐらいは笑っておきたかったのに。
幸せな記憶のまま壊してしまいたかったのに。
「・・どこかにいくの・・・?」
優しい問いかけに、答えは要らないというように私の手を握ってきた。
振りほどこうとすれば、簡単に振りほどけるだろう。
本当は、追いかけてきてくれるかもしれない。
引き止めてくれるかもしれないなんて、淡い
期待を抱いてたんだ。
だから、こんなにも苦しい。
きっと、私の腕をつかんだこの手は、私には振り解けない。
それをわかっててカカシは私の腕を握ったんだ。
君から逃れられない。
(残った思いは、恋か、情か。)