浅い夢−鳴門−

□貴方の居場所、私の願い
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昔、こうやって無理矢理押さえつけられたときに、拒んだことがあった。

押さえつける腕を振り解こうとして、やめてと叫んだ。
そんな私に、カカシは初めて声を荒げて、黙れといった。

怒りを向ける矛先が私になったのが、怖かった。

なによりも、いつも優しいカカシが声を荒げたのが怖かった。

おびえる私に、最後の理性でごめんとだけ言うと、カカシは私を乱暴に抱いた。

その行為が終わるころには、私の顔は涙でいっぱいになっていた。
行為が終わると、カカシは、ごめん、と何度も繰り返し、優しく私を抱きしめ続けた。

けど、その体が小さく震えていて、この人も辛いんだと思うと、自然と涙が止まっていた。

涙が止まった後も、優しく私を抱きしめたまま、瞼や、頬に口付けを落とし続けた。
二度目の行為は、優しく、割れ物を扱うように抱いてくれた。

この人は、こうやってしか自分の不安を消し去ることができないんだ。
人に、頼ることをしらないんだ。
そんなカカシに、愛しさがわいた。

そのまま鎖骨まで下がり、鎖骨に噛み付く。

「っ、・・・」

痛い。
心も、体も、カカシはどれだけ傷ついてきたの?
こうすることでしか、私は癒せないの・・・?

気づけば、腕が勝手に動いて、カカシを抱きしめていた。

カカシから匂う血の香りに少しだけ眉をひそめた。
そんな私に驚いたように行動をとめるカカシ。

「好き・・・。」

ぽつり、ぽつりと言葉が口からあふれ出す。

「愛してる。
だから、私に頼ってよ、
不安なら、言って・・・。
ずっと抱きしめるから。」

溢れ出した言葉とともに、頬を伝う雫。
その雫をカカシは指で優しく掬い、ごめんといった。

「こうすることでしか、俺は・・・。」

そういったカカシの唇を強引に塞ぎ、私はカカシの瞳を見つめた。

苦しそうに、自分の痛みを癒す場所を捜し求めてる瞳。
そんな瞳を見つめて、涙をまた流す。

「カカシ、ないて、いいよ・・・?」

嗚咽を漏らしながら、私はカカシを抱き寄せる。
そんな私に困ったようにカカシは少し口元を緩ませ、

「先になかれてちゃ、ね・・・。」

そういって、逆に私を抱きしめる。
そして、ありがとう、と私の唇にそっと口付けを落とす。

もう、震えてなかった。

貴方の居場所、私の願い
(せめて貴方が笑って暮らせますように。)
(苦しさが、すべて消えますように。)
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