浅い夢−鳴門−
□瞳の奥
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「・・・誰だ?」
冷たい声。
千本を口にくわえながらよくしゃべれるよな、とか、どうでもいいことが頭に浮かぶ。
返事をせずにゆっくりと扉を開く。
ベッドに上半身を起こしているゲンマ。
久しぶりに視線を交差させる。
そして、止まる。
いつもなら、二人とも同時にそらしていた。
なのに、今日は、どちらとも逸らさない。
逸らせない。
お互いの瞳をじっと見つめあう。
そして、
「見つけた。」
やっと、見つけた。というようにゲンマはゆっくり微笑み、手招き。
それに吸い寄せられるように近付いた私の腕を掴み、自分の胸に抱き寄せる。
「好きだ。」
そういうと、返事を聞こうともせず、もう一度視線が交わる。
口に含んでいた千本は、はずしており、近付いてくる瞳。
ゆっくりと閉じた視界に、暖かい唇。
何度も、何度も。
合間に、少しだけ息を吸って。
互いの瞳の中にある燃え盛る熱い感情を確かめあうように。
深く、甘く。