浅い夢−鳴門−
□雪に涙
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ゲンマは、焦りのような、怒りのような、悲しみのような謎なきもちを抱え、過去最速と言える速さで
木の枝を飛び移っていた。
ゲンマをそんな気持ちにさせたのは、アスマの一言だった。
「刹那ちゃんが、里を抜けた。」
その言葉は、ゲンマに重くのしかかった。
里を抜けた。つまり、抜け忍となった。その言葉が指す意味は、
思考を止めようと口に咥えた千本をかみ締めたゲンマの目に、見慣れた後姿が映りこん
だ。
ふわりとゆれる長い髪。
額宛の結び目から伸びる、布。
からん、ころんと音を立て進む下駄。
ゲンマが息を吸って、名前を呼ぶ前にその女は振り向いた。
そして、目に映る優しく微笑む女の額にある、木ノ葉の額宛に書かれた一本線。
「やっぱり来てしまったのね。」
悲しげに伏せられた瞳から、ゲンマは刹那の考えを読み取ることはできなかった。
「・・・・・ほんとに、里を抜けたんだな。」
ため息と交じり合う、か細いゲンマの声。
刹那は、その声に反応することなく、素早くクナイを抜いた。
ゲンマは少し歪んだ視界を、腕で素早く取り除き、ふっと千本を刹那に向け吹いた。
刹那も、その行動に反応するように、クナイをゲンマに向け投げた。
からん、と音を立てて千本とクナイが地面に落ちる。
ゲンマは、地面に飛び降りて、刹那に向かい、もう一度千本を吹く。