浅い夢−鳴門−
□きっと惹かれたのは出会ったころから
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「ゲンマ、私――」
貴方のことが、と言うつもりではなかった。
昨日はお酒に飲まれてて、といういい訳が口をついて出そうになる。
優しく髪に触れるゲンマの指先に言葉を飲み込んで、黙る。
一晩を共に過ごしたからなのだろうか、なぜ愛しそうに私をみつめるの?
心を渦巻く苦しさが、言葉になりあふれそうだった。
何を言っていいかわからず、黙ったまま俯く刹那にゲンマは囁くことすらせず、ただ首に顔をうずくめた。
さらさらと落ちてくる髪が刹那の首をくすぐる。
何故かゲンマを愛しく感じる、そんな刹那にゲンマは言葉を吐いた。
「俺は、酔ってお前を抱いたわけじゃねぇ。」
優しい音色に、ゆらりと傾く身体。
ぼふっ、と柔らかな布団の上に敷かれ、その上に覆いかぶさってくるゲンマ。
弧を描いた口元に魅せられた昨日を思い出す。
きっと、惹かれたのは出会ったころから。
(君との未来が交わるのは今から。)