浅い夢−鳴門−
□それは儀式のように
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「起きてんだろ。」
其の一言を彼女に向かい放つ。
閉じられていた瞳の長い睫毛が数回上下し、其の中の黒が俺をはっきりと捉える。
交差した視線を故意に逸らし、弧を緩やかに描く口元を見、自分の感情が昂ぶる。
理性で押さえつけられていた心裏。
躊躇いながら彼女へ伸ばした手を、彼女は少し傷の入った柔らかい掌で包み込むと、弧を描いた口元を崩すことなく息をつく。
再び閉じられた瞳に口付けを落とし、とまらねぇからな、と耳元で囁けば、知ってる。
と短く、妖しい声で俺を受け入れる。
ぞくっ、と背中を流れる快感を悟らせること無く、先程まで弧を描いていた歪んだ唇に深く自分の唇を押し付け、洩れる彼女の吐息と共に開かれる口に舌をねじ込む。
「んっ・・・。」
俺の舌を少し拒むように押した彼女の舌を絡めとる。
優艶な彼女を赤く空を染める光が包み込み、艶やかな姿で俺を受け入れた。
【それは儀式のように】
(俺とお前の境界線を越える儀式。)