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□不器用な愛情
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「土方さぁん!」
仕事に追われ、少し外の空気を吸おうと部屋のから出た途端に
泣きそうな声が響く。
この声は千鶴だ。
はぁ、と溜息をついてから振り返れば、やはり涙目になっている千鶴がこちらに走って来る。
「走るな!」
「土方さん……っ
」
「落ち着け。何があった?」
息も絶え絶えに言うもんだから、何事かと問えば
千鶴は堪えていた
涙を落としはじめる。
「沖田さんが……」
「……また総司か」
千鶴の口から出た名前に自然と声が低くなる。
「で?今度はなんだ」
「沖田さんが…っ」
言いかけたところで
後ろから別の声がかかる。
「ちーづるちゃん」
その声を聞いた千鶴の肩がビクッと震え、
そのまま脱兎の如く走り去ってしまった。
後に続こうとする総司を呼び止める。