BL小説(TIGER&BUNNY編1)

□【虎兎】続・愛のかたまり
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コールしようとした。
でも、出来なかった・・・

今は家族と水入らずで過ごしているあの人の邪魔はしたくない・・・

・・・でも・・・声だけ・・・

「・・・駄目だな・・・」

自嘲気味に笑って、携帯を閉じた時・・・

トゥルルル・・・トゥルルル・・・

「っ?!もしもしっ?」
『あ、バニー?』

咄嗟に通知を押して出ると虎徹さんだった。

『久しぶりだな〜。元気か?』

虎徹さんだ・・・虎徹さんの声だ・・・

『・・・バニー?』
「あ、すみません・・・突然でビックリして・・・」
『ビックリしたのはこっちだよ。2コールで出んだもん!』
「・・・今、携帯を見ていたものですから・・・」
『あ、そうなの?』

貴方の声が優しく笑っている。

ヤバい・・・涙出そうだ・・・

『・・・今、どこ?』
「え?」
『だから、今どこにいんの?』
「あ、えっと・・・今は北の国にいますよ。とても寒いですが、凄く町並みが綺麗で・・・」

僕は先ほど会った親子連れの話をした。
うんうんと頷いて聞いてくれる。
そんななんでもない事が心地良い。

『そっか。その女の子何歳くらい?』
「そうですね・・・5・6歳ってところですかね・・・」
『へぇ〜・・・可愛い時期だな〜』
「楓ちゃんはもう可愛くないんですか?」
『何言ってんの?可愛いに決まってんだろ??でも、全然相手してくんないけど・・・』

虎徹さんはまた楓ちゃんとの話をあれやこれやと話している。

やっぱり、お父さんなんだなぁ〜って思う。
そして、少し考えてしまう。
僕はこの親子の間に入れないかもしれない・・・

『バニー?聞いてんのか?』
「・・・あ、すみません・・・」
『・・・・・・』
「・・・あ、もう切りますね・・・」
『バニー。』
「・・・はい。」
『お前、そっからオリエンタルまでどんくらいかかる?』
「え?・・・あ、そうですね・・・12時間くらいだと思いますけど・・・?」

何故?
何故今そんな事聞いてくるんだろ・・・?

『・・・分かった。とりあえず、お前うちに来い。』
「・・・え?」
『あれ?聞こえなかった?』
「いえ・・・聞こえましたけど・・・」

え?確かに聞こえた・・・
うちにって虎徹さんの実家に・・・来いって・・・?

僕はもう頭の中が混乱して、虎徹さんが話しているのをあまり理解出来なかった。
はい。はい。としか言ってない気がする。

『・・・じゃあ、待ってっからな。』

そう言って電話を切った。
僕は携帯を持ったまま、手をぶらんと下げていた。

・・・え?
・・・まさか、そんな・・・

「・・・虎徹さんの実家に行く・・・?」






僕は急いでタクシーを拾うと空港まで走った。
引退して初めて電話をくれた。
それで僕を実家に呼んでくれた。
その事が凄く嬉しい。
だって、さっきのようにあの人と同じ香水を嗅ぐ度に思ってた。
会いたい・・・声が聞きたい・・・
でも、まだ僕は何も見つけていない。
まだまだ僕には知らなければならない事が多すぎて、あの人とまだ会ってはいけない気がして・・・
気持ちは変わらないけれど、まだ自信が持てない。
なのに、あの人は"うちに来い"と。

・・・嬉しかった・・・あの人に会える・・・
あの人の暖かく大きな温もりを感じられる・・・・

空港に着き、搭乗手続きを取った。

早く、早く、僕をあの人の所まで・・・
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