BL小説(TIGER&BUNNY編1)

□【虎兎】地味虎について考えたらこうなった。
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僕はやっとヒーローとしてデビューをした。
両親を殺した犯人の情報を集める為に20年を費やした。
ヒーローになればより多くの情報を得られる。
これで犯人に近づける。
僕の心は向上していた。

なのに…なんだ、あの人は?!
助けた僕に文句ばかり。
挙句、"ヒーローは顔なんか出すな"と。
僕だって出したくて出してる訳じゃない。
本名を名乗り、顔を晒す事で犯人からのアクションがあるかもしれないと思ったからだ。

僕はこの後、ワイルドタイガーとコンビを組まされた。


「・・・あ、ばに・・ちゃん・・・これ・・・」

隣のデスクから書類を渡された。

最近まで知らなかった。
ワイルドタイガーこと、鏑木・T・虎徹がこんな、こんな…地味な人だったなんて!

誰が想像するだろう?
ワイルドタイガーの時の正義の壊し屋などの二つ名を持つように、人命救助を優先するあまり、物を壊しまくる人が・・・
まさか、普段はこんなに大人しい人だったなんて…

「ありがとうございます。」

僕は彼の顔を見ず、書類を受け取る。
彼は今、どんな表情をしているか分からないが、何か呻き声みたいにあ、とかう、とか言っている。

本当に調子の狂う人だ。

普段の彼は白のシャツにちょっと大きめの緑のカーディガンを羽織り、黒のスラックスを履いている。
目が悪い訳ではないみたいだが、黒縁の大きな眼鏡をかけ、前髪を垂らしている。
その前髪で隠れている瞳は常に伏せているから目を合わせる事も出来ない。

「あ、え〜・・・と、どう?」

恐る恐るお伺いを立てるように聞く彼。
先ほどの書類に不備があるかどうかを聞いているようだ。

「大丈夫です。これで問題ありませんよ。」

彼の方を向いて微笑んで見せた。
すると、安堵したようで気の抜けた顔で笑った。

・・・うわ・・・なんだ?・・・・・・可愛い・・・

ふにゃりと音がしたんじゃないかってくらいの笑顔がこぼれてる・・・
僕は不覚にもドキッとして、思わず顏を背けた。
彼は声を詰まらせて、そのまま黙ってしまった。



ワイルドタイガーの時の彼はアイパッチをつけている。
そのアイパッチ姿になると本当にワイルドになってしまう。
それこそ、ヒーローとはこうだと言わんばかりの熱血な男に。
あのアイパッチに何か仕掛けでもあるんだろうか・・・?
本気で思って、斉藤さんに聞いた事がある。
・・・残念ながらなんの仕掛けもないという回答だったけれど・・・



「ばに・・ちゃん・・・」
「はい?」
「あ、の・・・飯でも・・食いに・・・いかない?」
「え?」

普段の彼から想像出来ない事態が起こった。
ご飯に誘われた。
いつもそそくさと帰って行く彼が・・・?

「・・・だめ・・・?」

捨てられた子犬のような目で僕を見る。

「・・・・・いいですよ。」

そんな目で言われたら、受けるしかないじゃないですか!

僕が承諾するとまたふにゃりと嬉しそうな笑顔をした。

・・・なんなんですか?!
どんだけ可愛いんだ、この人!!





あの…この状況どうすればいいですか?




あのおじさんが食事に誘ってくれた事に浮かれてしまったのは事実なんですが…誘ったおじさんが食事する店を中々決められない。
確かに半分は僕のせいでもありますけどね。
顔だしヒーローなんかやってるとおいそれと店に入ってしまうと騒がれてろくに食事も出来ないですから。
しかし、中々店が決まらない。
業を煮やした僕は自分の家に誘った。
家ならデリを頼めるし、ゆっくり食事も出来る。
でも、このおじさんが誘ったのは自分だからとおじさんの家に行く事になった。

中に入って驚いた。
1人暮らしにしては片付けられていること。
いくつかの家族写真が飾られていること。
そう言えば、おじさんの左手の薬指に指輪が嵌めらている。

「おじさん、貴方、結婚してるんですか?」
「え?…あ、うん。け、結婚してるよ。お、奥さんは死んじゃったけどね…」

と、一つ写真立てを取って悲しそうに見ている。
チクリと胸が痛んだ。

え?何故、痛むんだ?
別に家族がいる事に問題はないじゃないか?

小さく頭を振って、おじさんを見た。
すると、大粒の涙を流し、鼻をすすって泣いていた。

え?ちょっ?!なんで?
なんか僕、地雷踏んだ?

今まで人と関わり合う事を避けていた僕は人が泣いている時、どう対処すればいいのか分からず何も出来ないでいた。
おじさんは僕の視線に気づいたのか僕の方を見ると、ますます顔を歪ませて泣いた。
写真立てを持っていない手を恐る恐る僕のライダースジャケットの裾を握る。

「…おじさん…」

僕は自然とおじさんに近づき、ハグをした。

そう言えば、僕が泣いた時にお母さんやサマンサおばさんがハグをしてくれた。
そう、頭を優しく撫でて…

「…大丈夫ですよ…大丈夫…」

そう声を掛けながら…

おじさんは思いっきり声を上げて泣いていた。



あの、だから…ハグの後、どうすればいいですか?
このおじさんを愛しいと思い始めている僕は…どうすればいいんですか…?



2012.5.30
 

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