BL小説(TIGER&BUNNY編1)

□☆【虎兎】続・地味虎について考えたらこうなった。
1ページ/4ページ

あの日。
おじさんに食事に誘われた日。
あの後、おじさんは散々泣いてから

「ご、ごめん・・・ばに・・ちゃん・・・」

と謝って、そのお詫びも兼ねて手料理をふるまってくれた。
簡単に出来るというチャーハンを。
確かに美味しかった。
色んな野菜が入ってエビも入って、隠し味にマヨネーズが入っているらしい。

彼との食事はどこか安心出来た。
彼は相変わらずもごもご喋っているのだが、彼を取り巻くオーラとでも言うのか?
ホッとさせる何かがあった。

彼は1人娘の"楓ちゃん"の話になると饒舌で本当に娘さんを愛しているんだなぁと分かる。

奥さんの事はやっぱり涙を浮かべながら、それでも昔を思い出しているのか嬉しそうに話してくれた。

時々胸がチクチクしたけれど、この人の昔の話は興味が湧いたので聞いていた。




あれから一度も食事に誘われない。
どうしてだ?
あの時、嫌われるような事はしていないはずだ。
事務所で話す時は以前より少し距離も縮まったように思っているのは僕だけなのか?
いや、そもそも彼は人を誘わない。
それは分かっている。
だけど、あの時の嬉しさはハンパなかった。

…もう一度味わいたい…
それは僕のワガママなんだろうか?


「ばに…ちゃん…。俺、先に上がらせて貰うね?」

彼はパソコンを閉じ、チラチラと見ながら僕に声を掛ける。

あの、ぼく、今日フリーですよ?
誘うなら今ですよ?

心の中で呟きながら、僕はチラリとおじさんを見て

「…お疲れ様でした。」

と、微笑みながら返した。

……なんで、そんなに僕を見るんです?


前髪の隙間から見える琥珀色の瞳。

普段合わない視線が今は僕の目を捉えている。
僕は耐えられなくなって、ふと視線を逸らした。

「…あのさ、ばにちゃん…何か…な、悩み事とか…ある…の…?」

え?悩み?

「…どうしてそう思うんです?」

おじさんの方は見ずに問いかけた。

「あ、いや…ばに…ちゃんの…顔が……辛そうだった…から…」

え?ちょっと待って下さい?
僕、微笑みましたよね?
なんなら、TV以上に笑顔作りましたよね??
……はっ?!
これはチャンスなのか?
おじさんから誘って貰うチャンスなのかもしれない…

「…いえ…悩みと言う訳ではないですよ?」

あ〜…僕は馬鹿なのか?
せっかくおじさんが心配してくれてるのに、何故このチャンスを利用しない?!

「あ…そう…なの…?…なら、言いんだけど…」

ほら!
すぐ引かれた!!

「あっ?!」
「えっ?!」

俯いて帰ろうとしたおじさんを引き止めるように声を上げてしまった…
振り返って僕をジッと見ている。

…何か言わなければ…

「あ、その、実は、知り合いの話で、ちょっと困った事があって…」

と、とんでもない頭の悪そうな言い訳を述べた。

くそっ…頭が回らない…
いつもの僕らしくない…

「…そうなの?え、あの…俺でよかったら…話聞く…けど…?」

…かかった?!

「あ、ありがとうございます…。じゃあ、今日は僕の部屋に来ませんか?」
「え?…いいの?」
「えぇ。僕の話を聞いて頂く訳ですし、ご招待します。」

おじさんは驚いた顔をして、それからまた、あのふにゃりとした笑顔をしてくれた。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ