BL小説(TIGER&BUNNY編1)

□【虎兎】地味虎さんはあの時こんな風に考えていたらいいと思う
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Top MaGからアポロンメディアに移籍した俺はこれからデビューする若いヒーローの添え物的な位置でと新しい上司のロイズさんから言われた。
レジェンドに憧れてヒーローになったのが10年前。
こんな地味な俺でもアイパッチをつけている時だけはヒーローでいられた。
それは多分レジェンドのおかげ。
あの人が力を与えてくれる。

だから、誰も知らないんだ・・・
ほんとは俺がすごい地味な奴なんて事・・・
昔からの親友アントンとかネイサンあたりは知ってるけど・・・


バディを組まされた若いヒーローはバーナビー・ブルックスJr。

いつでも自信満々で眩しいくらいにキラキラしてて・・・
とてもじゃないけど目を合わせられない。
アイパッチをつけてる時は俺もガンガン言えるんだけどね?


いつから思ってたんだろ?
バーナビーこと、ばにちゃんって・・・俺が普通な時は凄く優しいんだ・・・
事務所で一緒にいる時なんて、ちょっとツンケンした言い方だけど・・・最近は良く笑顔で話してくれるようになって・・・
そんな、ばにちゃんの事・・・すごく気になるようになったのは・・・
ばにちゃんを見るとドキドキする・・・
そして、ばにちゃんに見られてもドキドキして・・・
俺は初恋の時の事を思い出して、すっっごく勇気を絞って飯に誘ったんだ。
ばにちゃんはそれはそれはおっきな碧色の瞳を大きく開けて驚いていた。
返事を聞くまですごくドキドキして断られたらどうしようって思ってたら

「・・・・いいですよ。」

と、返事してくれた。
心底安心して俺は笑った。


その後、俺は飯に誘ったものの、ばにちゃんがゆっくり出来る店を探したんだけど・・・
あ〜・・・下調べくらいしておくんだった・・・
いっぱい連れまわしてしまって、ばにちゃんはとうとう

「・・・それでは、僕の家にしますか?それだと僕もゆっくり出来ますし・・・あ、でも何もないのでどこかで買わなければいけませんが・・・」
「・・・あ、それなら・・・お、俺の家に来て?」
「え?」
「お、俺がばにちゃん・・誘ったんだし・・・それで、ばにちゃんの家に行くのって・・・なんか悪いから・・・」
「・・・・・いいんですか?」
「うん。」
「・・・それじゃ、そうします・・・」

ばにちゃんは綺麗な柔らかい笑顔で答えてくれた。

こんなイジイジしている俺にそんな笑顔で答えないでよ・・・
もうそれだけで心臓もたない・・・

俺の家に着いてから、ばにちゃんは部屋に飾られている写真を見て驚いていた。

・・・そりゃそうだよな・・・
こんな地味でうだつの上がらないおじさんが結婚してたって知ったら。
改めて写真を持ちながら、答えたら…なんか涙出てきた…
何故かは分からないけど…
早く泣くのを止めなきゃ…

そう焦って涙を止めようとすればするほど、かえって溢れ出してくる。
ばにちゃんが困っているのは分かっているのに…
すると、部屋中の空気が少し揺れたと思ったら…ばにちゃんが俺を優しく抱きしめてくれた。

……え?

俺の背中をポンポンと慣れない手つきで優しく叩いて、

「・・・大丈夫ですから・・・大丈夫・・・」

と、慰めてくれた。
俺はその優しさで胸がいっぱいになって、かろうじて抑えていた声を・・・出した。
ばにちゃんにしがみつくように背中に手を回して、思いっきり泣いた。

散々泣いた後、やっとばにちゃんから離れてチラッと見た。
困ったように笑ってる。
そんな顔にもドキドキして、顔が赤くなった。
見られたくなくて俯いて、お詫びにと俺は得意のチャーハンをばにちゃんにご馳走した。
作ってる最中、ばにちゃんはソファから時々こっちを見てる。

・・・ばにちゃん、自分で飯作んないのかな?
すっごい物珍しそうに見てる・・・
・・・・・もし、作れるんなら食いたいなぁ・・・・・ばにちゃんの手料理・・・・


俺の作った飯をそれはそれは美味しそうに食ってくれた。
その笑顔は今まで見た事がないくらい自然で胸の奥がキュッてした。
ばにちゃん、そんな笑顔も出来るんだ。
もっと見たい。
ばにちゃんの自然な笑顔。

俺はこの日、完全にばにちゃんに恋に落ちた。




はっきりと意識したら、もう駄目だった。
基本的にばにちゃんは単独の仕事が多いから帰る時間が一緒になる事は少ない。
事務所にいても定時に終わってからスポンサーとの会食やらパーティやらに行く。
コンビだから俺も行かなくちゃならないとロイズさんから言われてるけど、やっぱりそういうのは苦手で断わってしまう。
それをばにちゃんが俺の分まで1人で背負っている事を知ったのはずいぶん後になってからだ。


「ばに・・ちゃん・・・俺、先に上がらせて貰うね
?」

ほんとは飯に誘いたいのに誘えない。
俺がヘタレってのもあるけど、ばにちゃんとあんまり目が合わない。
それはすっっごい勇気を振り絞って誘ったあの日以降、すぐばにちゃんとしゃべった時に分かった。
・・・やっぱり、泣いちゃったからかな?
すごい迷惑だったんだろなぁ・・・

「・・・お疲れ様でした。」

あ、笑ってる。
・・・けど、なんかいつもの綺麗な笑顔と違う。
なんだろ・・・?
無理に笑ってる感じ・・・泣きそう・・・?
・・・目逸らした・・・

「・・・あのさ、ばにちゃん・・・何か、な、悩み事とか・・・ある・・・の?」

なんか悩みとかあったら聞きたい。
そう思って口に出したら、ばにちゃんは目を見開いて驚いた。

・・・あれ?違った??

「・・・・どうしてそう思うんです?」

・・・あ、また、目逸らされちゃった・・・

「あ、いや・・・ばに・・ちゃんの・・顔が・・・・・」

泣きそうとか言ったら怒るかな?
え〜・・・っと・・・

「・・・・・・辛そうだった・・から・・・」
「いえ・・・悩みという訳ではないですよ?」
「あ・・・そう・・なの・・・?・・・なら、いいんだけど・・・」

やっぱり俺なんかに悩みなんか打ち明けないよな?
俺、頼りないし・・・

軽くへこんだ俺は肩を落として帰ろうとした。

「あっ!」
「えっ?!」

急にばにちゃんがおっきい声出したからビックリした。
思わず反応しちゃった。
ばにちゃんの顏を見ていたら、

「あ、その、実は知り合いの話で、ちょっと困った事があって・・・」

ほんとに困った顏してる・・・
ばにちゃんの困った顔とか見たくないなぁ・・・
俺、話聞いてもいいのかな?

「・・・そうなの?え、あの・・・俺で良かったら・・・話聞く・・・けど・・・?」
「あ、ありがとうございます。」

あ、ホッとした顏した。
やっぱり、ばにちゃんには笑顔が似合うなぁ〜・・・

あのばにちゃんが家に招待してくれた。
自分の話を聞いてくれるのだからと。
好きな子の家に行けるっていうのははっきり言って凄く嬉しい。
妙にドキドキして・・・こんな気持ち、友恵ちゃんの時以来だなぁ〜・・・

ばにちゃんを車に乗せてばにちゃん宅まで走らせる。
途中でご飯とお酒を買ってきた。
でも俺、運転してるから飲めないって言ったのに

「ちょっとくらい、付き合って下さいよ?」

なんて微笑みながら言われたら、ダメだって分かってても・・・ちょっとくらいならいいよって答えちゃうよ・・・

家に着いて、中に入ると殺風景な部屋だった。
凄く広いのに人が住んでる感じがしない。
リビングに壁いっぱいのTV。
小さいテーブルにリクライニングチェアー。
ただそれだけしかない。

・・・寂しくないのかな、ばにちゃん?

そんな事を思いながら、促されたとこに座ったものの、ばにちゃんがフローリングに座ってしまったので俺もばにちゃんの隣に座った。
ビールを渡されて一口。

・・・早く、話聞きたいなぁ・・・
知り合いの事とはいえ、ばにちゃんが悩んでるなら早く聞いて解決してあげたいなぁ・・・
・・・・・・待っても待っても話す気配がなくて、ちらっとばにちゃんを見たら・・・
なんで俺の事見てるの?!
ちょっ・・恥ずかしいっ!
キラキラな瞳で見ないでよ・・・

思わず俯いてしまった。
そしたら持っていたビールを取りあげられた。
え?って思ってばにちゃんを見たら

「・・・貴方が悪いんだ・・・」

って、俺の頬に手を添えてきて・・・キスされた・・・

え?!なんで?!
なんでばにちゃん、俺にキスすんの??

頭の中はパニックで離そうにも力が入らない。
それどころか・・・

・・・ばにちゃんの唇ってやらけぇ・・・
気持ちいぃ・・・ヤバい・・・ずっとしてたい・・・
・・・中に入りてぇ・・・口ん中入りてぇ・・・
あ・・・この感覚・・久しぶりだ・・・
やっぱ俺バニーの事好きだからだな・・・

俺はバニーの髪に手を差し入れて自分の方へ引き寄せた。
バニーの唇をペロリと舐めて、少し開いたところをすかさず入った。
バニーの舌が奥で縮こまっていて絡ませられない。
それなら、もっと気持ちよくしてやる。

「・・・んっ・・・んんっ・・・」

バニーの髪を掻きまわして、歯列をなぞって、上顎、下顎を舐めまわした。
バニーの舌が少し俺の舌にあたったのを素早く絡めとる。
そこからはバニーも必死に俺の動きに応えようとしてて・・・可愛い・・・
キスをしながらバニーの身体を抱き締めつつ、くるりと反転させて覆いかぶさった。
名残惜しそうに唇を離す。

「バニー・・・」

もうこの感覚になってしまった俺は止まんねぇよ、バニー?
今すぐ、お前欲しいもん・・・

濡れた翠色の瞳が俺を見つめてる。

なんで?って顏してんな〜?
そりゃそうだな。
普段の俺からは想像もつかねぇもんな?

「・・・お、おじさ・・・ん?」

やっと絞り出したような声で俺を呼ぶ。
思わず俺は微笑んだ。

「・・・ごめんな・・・」

わりぃな、バニー・・・
お前からの熱烈なキスでスイッチ入っちまったから・・・

・・・今からお前を抱くよ・・・バニー?
 

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