BL小説(TIGER&BUNNY編1)

□【モブ→虎兎】貴方の隣にいるのは俺じゃない。
1ページ/13ページ

彼はたまに来る常連客のようだった。
琥珀色の瞳。黒髪。細い腰。長身。猫型の髭。
人懐っこい笑顔。
俺はずっと彼と喋りたいって思ってた。

・・・・・・

「バニー!なんでお前、こんなとこにいんの?」

喋りたいと思っていた人から声を掛けられた。
突然の事でビックリして声も出なかった。

バニーって俺の事?

「おい。聞いてんのか、バニー?お前今日、取材とか言ってなかったっけ??」

・・・取材?

「なんだよ、その顔〜?」

彼は俺の隣に腰を落とすとハンティング帽を脱いだ。

…もしかして、バーナビーと間違われてる?

俺はよくバーナビーに似ているとバーナビーがヒーローデビューした時から言われ続けていた。
それもそのはず。
俺はヤツとは双子だからだ。
その事は俺が二十歳になった時に一緒に住んでたじいさんに聞かされた事。

"お前には双子の兄貴がいる"

まさかそれが今やヒーローで活躍しているバーナビー・ブルックスJrだとは思わなかったけど。

「バニー?」

ここは彼の言う"バニー"になるべきか…
それとも"俺"でいるべきか…

「・・・そんなに似てる?」
「へ?」

俺は"俺"としてこの人と話したい。

「そんなにあんたの言う"バニー"ってヤツに似てる、俺?」
「え?あ、えぇ??バニーじゃねーの??」
「あぁ。俺はバーニー。」
「バーニー?」
「ま、バニーって呼び方でも間違いないって言えば間違いないけど?」

ロックグラスを傾けながら俺は彼に微笑んだ。
彼は琥珀色の瞳でじっと俺を見つめている。

・・・吸い込まれそうだ・・・

すると彼はパッと人懐っこい笑顔をして

「そりゃそうだな!」

と俺の背中を叩いた。

・・・ドキドキする・・・
この人が触れた背中が熱くて堪らない・・・
やっぱ俺、この人の事好きだ・・・

「あんた、名前は?」
「んぁ?」

彼は陶器のグラスに口を付けたまま俺を見た。

「あ・ん・た・の・な・ま・え。」
「あぁ。俺は虎徹。」

・・・虎徹・・・

「やっぱ名前も日系なんだね。」
「その通り。良く分かったな。」
「あんたの顏見れば分かるよ。」
「・・・虎徹。」
「え?」
「虎徹だ。名前教えたろ?」
「・・・・・虎徹。」
「そ。名前教えたんだから呼んでくれなきゃな、バーニー?」




俺はベッドに横たわって天井を見上げた。

ずっとずっと見てたんだ、彼を。
何度も何度も俺の隣を横切ってカウンターに座って酒を飲む。
その姿が凄くカッコ良くて・・・見惚れていた。
・・・虎徹か・・・

「虎徹さん・・・虎徹・・・虎徹・・・虎徹・・・」

名前を呼ぶだけで俺は頭の中が痺れてくる。
彼の・・・虎徹の顔で埋めくされていく・・・

「・・・また会えるかな・・・虎徹・・・」

俺はごろりと横を向いて自分の体を抱きしめ、目を閉じた。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ