BL小説(TIGER&BUNNY編1)

□【牛折】ハッカ キャンディー
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お前はいつも「好き」だと言ってくれる。
俺の気持ちを聞きたそうにしながら・・・

でも俺は恥ずかしくてつい生返事で返してしまうんだ。

ごめんな、イワン・・・




「アントンさ〜、ちゃんと折紙に言ってんのか?」

いつものバーで虎徹と2人で飲んでいると不意にそんな事を言われた。

「んぁ〜?なんだよ、いきなり?」
「あいつ、またバニーに相談してたぞ?」
「はぁ?何を?」
「んなの俺が知るかよ。そのせいでお前っ、俺はバニーと2人っきりになれないんだぞっ!くそっっ!!」

途中からヤツ当たりのように俺の背中をバシバシ叩きながら焼酎を飲み干した。
わりぃなと思って虎徹のグラスを取りあげてマスターにお代わりを頼む。

「お前っ、ほんっっとに俺より不器用だよな〜。」
「ほっとけ。」
「折紙の事好きなんだろ?」
「当たり前だ。」
「じゃあ、ちゃんと"愛してる"くらい言ってやれよ。」
「んなの、恥ずかしくて言えっかよ!」
「デカイ図体してる癖に小心者なんだからよ〜」
「身体関係ねぇだろ?」

確かに俗に言う"愛の言葉"とかはあまり言わない。
もう付き合ってんだから言わなくても分かんだろ?とかそんな言葉恥ずかしいとか思ってつい言わないでいる。
・・・分かってはいるんだ。
あいつが俺の言葉を待っているのは・・・
気持ちのまま言おうと思っても、あいつの・・・イワンの顏を見ると言えなくなっちまうんだ。

「もしかして今日もバーナビーと一緒なのか?」
「そ・う・だ・よ・っ・っ!!」

だから虎徹は機嫌が悪いのか。

カウンターに突っ伏して不貞腐れている虎徹を横目で見ながらブランデーに口を付ける。

「それはわりぃ事したな。」
「ほんとだぜ。いい加減ちゃんとしろよ、牛!」




これ以上虎徹の機嫌が悪くなると後でややこしいと思った俺は飲むのもそこそこにして店を出た。
虎徹から念押しをされ笑って答える。

「全く酔えなかったなぁ〜・・・」

虎徹と別れてから俺は大通りを歩いて行く。

俺らが付き合う事になったきっかけも身体を重ねるきっかけもイワンからだ。
顔を真っ赤にして好きだと、抱いて欲しいと言ってきた。
俺はそれに答えただけ。
いや、気持ちはあったんだ。
ただ俺はどうしても言い出す事が出来なくて…

「・・・こんな俺でいいのか、イワン?」

ちゃんと言葉に出来ない臆病者な俺。
そのくせ誰にもあいつを渡したくないと思っている俺。

「はぁ〜・・・」

夜空を見上げて息を吐く。
冷たい空気で綺麗な星たちが俺の心を切なくさせた。



家に帰ってからまだ飲み足りないと思った俺はブランデーのボトルとロックグラスを持ってソファに座った。
グラスに酒を継ぎ、一気に煽る。
酒が身体に染みる。

「・・・旨くねぇなぁ・・・」

グラスをテーブルに置きソファに寝転んだ。
スッと爽やかな香りが鼻を掠める。
寝転んだ頭のあたりに服の塊。
手でそれを取り上げるとそれはイワンの服だった。

「なんで、こんな匂いすんだろな・・・」

イワンが俺ん宅に泊まる時に着ているパジャマ。
あいつの匂いが染み込んでいるそれを両手で広げて顔に被せた。
スンと吸い込むとイワンの香りが俺の脳を刺激する。
ミントの爽やかな香りと時々ふわりと甘い香りが重なる。

「・・・っ」

イワンの濡れた瞳と真っ赤に染まった頬。

「・・・っっ、ヤベッ・・・」

慌ててイワンのパジャマを顔から剥がした。

「危うく元気になっちまうとこだった・・・俺のが・・・」

深く息を吐いてからイワンのパジャマを床に落とす。

「・・・愛してる・・か・・・」

両腕で目を覆う。

「・・・そんな言葉なんか足りねーよ・・・イワン・・・」
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