BL小説(TIGER&BUNNY編2)
□☆【虎兎】10年たっても・・・
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あれから10年。
初めて出会った時の貴方と同じくらいの年齢になりました。
貴方に近付いたような・・・まだ追いつかないような・・・
この歳になって分かった事と言えば、あの頃の貴方が異常に若かったと言う事くらい。
「バニー!」
「・・・はい?」
「いつまでもベッドにいないで早く起きてこいよ?」
「・・・うん・・・もう少し・・・」
いつもと変わらない朝。
10年立っても僕の低血圧は治らない。
虎徹さんは僕と結婚をして一緒に住み始めてから僕を起こしてくれる。
それまでの僕は深く眠りにつく事が出来なかった。
だから自分が朝が弱いという事を自覚したのは虎徹さんと付き合って初めて一緒に迎えた朝だった。
「ほ〜ら、バニー?」
ベッドの脇に腰を落として僕の髪を優しく撫でてくれる。
「今日はロケがあるっつってたろ?」
ロケ?
僕はその単語を聞いて一気に目を覚ました。
「うわっ?!そうだった!」
勢い良く起きた僕に虎徹さんはクスクス笑う。
「今、何時?え?11時??」
僕はバタバタとバスルームに向かう。
虎徹さんが後から飯出来てるぞと笑いながら声を掛けていた。
2年前。
虎徹さんと僕はヒーローを引退した。
虎徹さんは僕も一緒に引退をするとは思ってなかったらしくとても驚いていたが僕としては至極当然の事だった。
ロイズさんやベンさん、斉藤さんからもヒーローを続けるように言われた。
僕の決心は固く一度も首を縦には振らなかった。
ヒーローを引退した僕に芸能プロダクションやらモデル事務所やらからのオファーが殺到したが
ファイヤーエンブレムの一言で僕は彼女(彼?)が僕の為に立ち上げた芸能事務所に入る事となった。
虎徹さんはアカデミーの校長先生から講師の仕事を進められ、その道へ。
僕はヒーロー時代とそう変わりない不規則な生活だけど虎徹さんは規則正しい生活に変わった。
それでもこれからヒーローになるだろう生徒と接する事が楽しいみたいでいつもニコニコしながら話してくれる。
目尻の皺や少しだけ白髪が混じった髪は変わってしまったけれど根本な部分は変わってない。
「帰りはなるべく早く帰りますね。」
「まぁ、そう無理すんな。ネイサンの奴が離さねぇかもしんねぇぞ?」
「そうですね。」
虎徹さんは笑顔で行ってこいと言いながら僕に軽くキスをした。
10年立ったんだなぁ・・・
僕は撮影中にふとそんな事を思った。
僕の誕生日にプロポーズされて、虎徹さんのご家族とも改めてお会いして・・・
楓ちゃんが中学生になってシュテルンビルドに移り、そして・・・子供だった彼女ももう20歳。
立派な大人の女性になった。
「バーナビーさん、すみません。次のシーンで出演される女優待ちなので休憩して下さい。」
「はい。」
スタッフさんに言われ、僕は一旦楽屋代わりにお借りしているホテルへと戻った。
シングルベッドに腰を下ろした時、ドアをノックする音がし返事をすると
「ハァイ、ハンサム〜〜!」
ファイヤーエンブレム・・・いや、ネイサンが入ってきた。
「おはようございます社長。」
「いやん!その呼び方止めてって言ってるじゃないの〜〜」
彼女は科を作りながら僕の傍に近付いた。
「止めてと言われても貴方は僕を雇っている社長には間違いないですから。」
「んもぅハンサムったら〜、まじめなんだから〜〜!」
赤く長い爪で僕の頬を撫でた。
それを僕は軽くかわし、鏡に向き直った。
鏡越しにネイサンを見つめると
「で?今日はどうしたんですネイサン?」
「どうしたって・・・アンタの様子を見に来たのよ?」
「それだけで来る程、貴方は暇じゃないでしょ?」
「んもぅ〜・・・面白くない子ね。」
少し拗ねたような言い回しをしながらも彼女はどこか楽しげに笑う。
「実はアンタにまた映画のオファーがあったの。」
「え?またですか?!今ドラマやラジオも数本抱えているし、映画も2本かかっているのに・・・まだこの上もう1本ですか?」
「ごめんなさいねハンサム?今回は海外からのオファーでワタシも最初は断わったんだけど・・・
相手がどうしても貴方を起用したいと言ってくるものだから・・・」
申し訳なさそうな顏で言う彼女に少しため息をついた。
「・・・分かりました。その話受けます。」
僕の返事に彼女はその大きい身体で僕を抱きすくめた。