BL小説(TIGER&BUNNY編2)
□【虎兎】君がどんな姿でも…
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「やっぱイケメンだよな〜。」
「いつまで鏡見てるんですか?それに僕の声で僕の姿を褒めるのは止めて下さい。」
「お前こそ、俺の声で敬語とか止めろよ。」
アポロンメディアのバディヒーロー、タイガー&バーナビー。
いつもの2人がヒーロー事業部のデスクに隣合って座っている。
但し、自席ではない。
虎徹はバーナビーの席に、バーナビーは虎徹の席に座っていた。
事は昨日に遡る。
昨夜遅くに呼び出しがかかった2人は夕食もそこそこに出動した。
引ったくり犯は2人によって簡単に逮捕された。
だが、その引ったくり犯は逮捕直前にNEXT能力を発動。
タイガーとバーナビーはその能力を浴びて中身が入れ替わってしまった。
そして冒頭の会話である。
「お前、すげぇ目悪いんだな〜」
虎徹はバーナビーの姿で眼鏡をつけたり外したりしながら呟いた。
「僕の眼鏡で遊ぶのは止めて下さい。」
バーナビーはいつもの癖で眼鏡の縁に手を添えようとして眼鏡がない事に気づく。
クッと喉を鳴らしてパソコンの画面に向き直した。
それを隣でクスクスと笑うバーナビー(中身・虎徹)
キッと睨む虎徹(中身・バーナビー)に肩を竦めて
「俺の顔で睨むなよ〜」
とバーナビーの顔には似合わない情けない顔と声が出した。
「貴方こそ、僕の顔でそんな情けない顔しないで下さいっ!」
この能力はどうやら一時的なもので他の被害者も24時間で能力が溶けたと報告を受けている。
だからこそ2人は余裕があるのだ。
但し、この24時間内に出動があった場合はいくらバディとはいえど身体が慣れない事から出動は免除された。
今日一日デスクワークだけした2人は定時には上がり、虎徹の家へ向かった。
「なぁなぁバニー?」
夕食を食べ、ソファでくつろいでいるとバーナビー(虎徹)が不意に声を掛けた。
虎徹(バーナビー)は嫌な予感をさせながらバーナビー(虎徹)を見る。
「…なんですか?」
「そんな顔すんなよ〜?」
ジリジリと虎徹(バーナビー)に寄っていくバーナビー(虎徹)が虎徹(バーナビー)の耳元に唇を近づけた。
「…しよ?」
自分の声で囁かれ、虎徹(バーナビー)は怪訝な顔を向ける。
「何考えてるんですか?」
虎徹の声が冷たく突き刺さる。
「自分の姿に迫るなんてどうかしてます?!しかもこの場合、どっちがどっちになるんですか?!」
…そんな問題ではない気もするが。
とにかく虎徹(バーナビー)はバーナビー(虎徹)から距離を置いた。
「…あ、」
今更気づいたように目を見開く。
「そ〜だなぁ〜…俺がバニーでお前が俺なんだから俺がお前に抱かれる側?いや、俺入れたいし…って事はバニーな俺がお前に…」
今までにないくらいの真剣な顔をしてバーナビー(虎徹)は腕を組んで悩んでいる。
そんなバーナビー(虎徹)を虎徹(バーナビー)は冷ややかな目をして見ると無言で立ち上がった。
「え、ちょ、バニー?」
「今日は疲れましたのでシャワーを浴びて休みます。虎徹さんは1人でいつまでも悩んでいて下さい。」
振り向きもせずに言い放つとバスルームへと消えて行った。
「…っだっ!」
1人残されたバーナビー(虎徹)はいつもの口癖をバーナビーの柔らかい声で叫んでいた。
バスルームに来たはいいが虎徹(バーナビー)はアンダーを脱ぐのを躊躇っていた。
自分の身体ではない。
小麦色に焼けた肌。逞しい胸板。そのわりに引き締まった腰のライン。細い足。
何もかもが自分と違う身体。
この身体で自分を抱きしめ、背中を預け合う。
…見慣れているはずなのに…
虎徹(バーナビー)は鏡写った虎徹の身体を見つめる。
いつもは身体を重ねる事に夢中でじっくりと虎徹の身体を見る事はない。
いや、出来ないでいた。
しかし今鏡の中に写る姿はじっくりと見た事がなかった彼の身体で…
鏡に写る虎徹がバーナビーを見つめているような錯覚に陥る。
すると緩やかに芯を持ち始めた虎徹のモノがアンダーを押し上げた。
…何を考えているんだ、僕は…?!
虎徹(バーナビー)は鏡から視線を逸らした。
一度だけ深く深呼吸すると目を閉じたまま最後の一枚を脱ぎバスルームに入った。
虎徹(バーナビー)がバスルームから帰ってくるとバーナビー(虎徹)はビールを飲みながらレジェンドのDVDに夢中になっていた。
客観的にみればシュールな光景である。
バーナビーがレジェンドのDVDを見てふにゃふにゃに笑ったり、応援したりしているのだから。
バスルームで虎徹の身体を見て興奮し、あまつさえ自慰までしてしまった自分は負けたような気分になった。
深くため息をつくとソファの後ろを通り過ぎる。
「お、上がったか?」
虎徹(バーナビー)に気づいたバーナビー(虎徹)がTV画面を見ながら声を掛ける。
「はい。お先にお風呂頂きました。」
それだけ答えて虎徹(バーナビー)はロフトに上がる。
階段の途中で立ち止まると、
「貴方も早く寝てくださいよ?今日の夜中には身体が戻るんですから。
明日は仕事ありますからね。」
「ん〜」
バーナビー(虎徹)からの一応の返事を聞いて虎徹(バーナビー)は再び階段を上がっていった。
虎徹(バーナビー)はベッドに入ると瞼が重くなるのを感じた。
…疲れた…
ロフトの下からDVDの音量が抑えられているのか、あまり聞こえない。
まだロフトに上がってくる気配がないのが分かる。
虎徹(バーナビー)は先ほどのバスルームでの事を思い出し顔が熱くなった。
頭を振って思い出した事を振り払う。
ただ身体は正直なものでゆるく立ち上がったソレ。
…チッ…何故反応しているんだ、僕は…
瞼をギュッと閉じて寝返りを打った。
下半身が疼く。
頭では考えないようにしているが余計に意識してしまい、自然と手がソレを掴んでいた。
…駄目だ…こんな事……駄目だ…
否定する頭とは裏腹に虎徹(バーナビー)の手はそろりとソレを撫でていく。
まるで虎徹に触られているような感覚。
…さっき吐き出したばかりだと言うのに…
虎徹(バーナビー)は自慰をし始め、声を殺しているとシーツの上から撫でられた。
ドクンと音が心臓が鳴り身体が硬直する虎徹(バーナビー)。
「なに1人でキモチイイ事してんのお前?」
聞き慣れた自分の声で囁かれ、虎徹(バーナビー)は振り向けないでいた。
動きを見せないシーツの固まりをバーナビー(虎徹)はそっと抱きしめる。
「…俺の身体でなにしてたの?」
言い訳が出来ない。
ただ今は恥ずかしくて顔をあげる事も出来ない。
虎徹(バーナビー)はますますシーツにくるまる。
それを宥めるように優しく撫でるバーナビー(虎徹)。
「お前だけズルいよなぁ…俺の身体で1人エッチなんかしてさ〜…」
「ちがっ…!!」
撫でながらバーナビー(虎徹)は虎徹(バーナビー)の身体を抱きしめた。
虎徹(バーナビー)の耳元に唇を近づけると
「バニー…キモチイイことしようぜ?」
自分の声で囁かれているだけなのにどこか自分では出せない色気を感じ、虎徹(バーナビー)は腰にずしりと重さを感じた。
「よくあんな事が出来ますね貴方?!」
虎徹に背を向けているバーナビーが少し怒っている。
「だってぇ〜、しょ〜がねぇじゃん?」
「何がしょーがないんですか?!だいたい自分の身体相手に欲情するなんてどう考えてもおかしい!」
24時間たった現在、2人の身体はそれぞれ元に戻った。
あれからお互いに性器を握り合って吐き出した後、身体が元に戻ったのだ。
虎徹はバーナビーの背中に向かって正座をしている。
「そりゃ〜身体は俺の身体だったけどさ〜、中身はバニーじゃん?バニーがその気になってるって思ったらもう俺堪んなくってさ〜…」
「……」
「ばにぃ〜?」
バーナビーの背中をつんつんと突きながら猫なで声を甘える虎徹。
バーナビーは軽く舌打ちをして少しだけ振り向く。
「…貴方って人は…」
その頬が赤く染められて困ったように笑う。
「どれだけ僕の事、好きなんです?」
「そりゃ、もうっ!」
虎徹はシーツごとバーナビーを抱きしめる。
「…大好きだよ…バニー…」
バーナビーの耳元で甘く囁く。
その声にバーナビーは身震いした。
「…ぼくも、大好きですよ…虎徹さん…」
しっかりと虎徹の顔を見たバーナビーは軽く虎徹の唇にキスをした。
2013.4.24