BL小説(TIGER&BUNNY編2)
□【虎兎】キスの日のようです
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「今日って〜、キスの日ってんだって!」
僕の部屋で焼酎(虎徹さんの持参)を飲んでいた虎徹さんはいきなりそんな事を言ってきた。
「・・・は?なんですかソレ?」
「ほら、よく語呂合わせとかで○○の日とか言うじゃん?」
「あ〜・・・確か"8/21はバニーの日"だとか言って・・・」
あの日の事は口にも出したくないくらいの出来事で話したくない。
思わず口をつぐんでしまう。
虎徹さんは苦笑いをしてから両手を横に振った。
「ちげぇよ!・・・まぁ、合ってっけど・・・俺が言いたかったのは今日のキスの日ってのはまたちょっとちげぇんだ。」
虎徹さんの話によると昔日本で初めてキスシーンが登場する映画が公開された日が由来とさけているらしい。
「そう言えば僕たちの初めてのキスっていつなんですかね?」
「へ?」
「だって元々酔っぱらって初めて身体を重ねた訳ですし・・・ちゃんと付き合うのだってすでに何度目かのセックスの後ですし・・・」
そうなんだ。
元々僕たちは付き合ってからセックスをした訳じゃない。
セックスの時もキスはしていたけれど、あれはカウントに入れてもいいのか?
いや、やはりきちんと付き合ってからカウントすべきなんじゃないのだろうか?
「あ〜・・・まぁ〜・・・」
考えこんでいる僕に虎徹さんは歯切れの悪い相づちを打っている。
「・・・虎徹さん?」
「実は・・・あーーーやっぱ止めっ!!」
「ちょっと?!途中まで言っておいて止めないで下さいよ!」
「だって〜・・・バニー、ぜってぇ怒るもん。」
「"もん"とか言わないっ!」
可愛いんだからっ!
その言葉は飲み込んで僕は虎徹さんをキッと睨んだ。
「・・・怒んない?」
「話によります。」
「じゃあ言わねぇ。」
「分かりました。怒りません。」
渋々虎徹さんに合わせるように言うと虎徹さんは恐る恐ると言った感じで口を開いた。
「実はさ・・・まだお前がツンツンしてた時あんだろ?」
「・・・えぇ。」
「で、お前がぶっ倒れて俺が医務室に運んだ事あったじゃん?」
「・・・えぇ。」
あの時ウロボロスの情報を追うのに必死で食事もロクにせず寝る間も惜しんでいた。
その時僕は不覚にも過労で倒れてしまって虎徹さんに医務室へと運ばれた。
虎徹さんが先生を呼びに行っている間に寝てしまったんだ。
「お前が起きるまで俺傍にいただろ?あん時さ・・・やっちゃったんだよな〜、お前にキス・・・」
「・・・・・・は?」
思考が止まった。
え?まさか?そんな??
あの頃は僕も虎徹さんもそういう感情はなかったはず・・・
口煩い後輩だったし、何より僕はこの人の事が嫌いだった。
・・・それなのに・・・
呆然としている僕に虎徹さんは目の前で手をヒラヒラさせて声を掛けている。
「お〜い、バニー?」
その声で我に返った僕は虎徹さんの肩を掴み、
「なんなんですか?!僕が眠っている間に僕の唇奪ったってんですか??」
「ごめんって!だから言いたくなかったんだよ〜」
「あ、貴方っ・・・ほんとっ、・・・!」
信じられないっ!
酔ってセックスをした時がファーストキスだと思っていたのに・・・
僕は知らない間にファーストキスを奪われていたなんて・・・
ぽろぽろと涙が流れてきた。
泣くつもりなんかないのに・・・
虎徹さんは驚いて僕を抱きしめた。
「・・・ほんと、ごめん・・・そんなに嫌だった?」
・・・嫌だった?・・・いや、嫌じゃない・・・
どちらにしろ、初めての相手は虎徹さんに違いはないから・・・
首を横に振る。
「・・・ファーストキスだったんです・・・貴方が初めてだった・・・」
「・・・・・・」
「・・・その事実は変わりないんですけど・・・本当のファーストキスを覚えていないのが・・・悔しいんです・・・」
縋りつくように虎徹さんの背中に腕を回した。
「覚えてんの?初めてエッチした時の事?
「・・・えぇ・・・覚えてますよ?」
「あん時酔ってて覚えてねぇのかと思ってた・・・」
あの時は酔った勢いと言う事にしてこの人に抱かれた。
「あの時はわざと貴方に抱かれるようにしたかったから・・・」
「バニー・・・」
虎徹さんは僕の顎に手を添えた。
ちゅっと軽くキスをした。
「これからもずっとお前にキスを送るのは俺だけだから・・・」
ちゅっ・・・ちゅっ・・・
「それで許して?」
ちゅっ・・・
あぁ・・・そうですね・・・
本当のファーストキスは覚えていないけど
これからもずっとずっと貴方とだけなら・・・それでいいかな・・・
僕は返事をする代わりに自分から虎徹さんの唇に自分の唇を重ねた。
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