BL小説(TIGER&BUNNY編2)
□☆【虎兎】半年だけの恋人
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「・・・は?・・・バニーちゃん?・・・もっかい言って?」
俺はバニーの突然の"申し出"にもう一度問うてみた。
すると虚ろな目をしたバニーが呆れたようにため息をついて、
「全く・・・聞いてなかったんですか虎徹さん?今日から半年"お試し"で付き合いましょうと言っているんです」
「お試しで付き合い??」
「そうです」
「誰と誰が?」
「僕と貴方が」
「……」
「……」
「………はあぁぁぁぁ??」
「…煩い」
「いやいやいやいや、なにそれ?!どーいー展開??なんで俺とお前がお試しでも付き合うっつ〜話になんの??おじさん意味分かんないんだけど??」
ほんと意味分かんねぇよ?俺もお前も男だしバディだろ?確かに最近のお前ときたらなんだか可愛いくて無性に撫でたり肩組んだりすっけどさ〜それもアレじゃん?俺なりのなんつーの?コミニケーション?スキンシップ?そーいー感じのだし…だいたいっ
「お前っ、今っ、酔ってるだろ!酔った勢いでもそんな事言っちゃいけません!!」
「…多少アルコールは入りましたけど僕は酔ってません!」
「…だいたいそう言うよ…酔ってるヤツ…?」
「……」
あ、黙っちった…
バニーはジッと俺の顔を見て唇を噛んでる。
悔しい時の顔だ。
「…あ、バニー…?」
「…もし、僕に付き合う女性が現れた時に…不安なんです…」
「ん?」
「…今まで女性と付き合った事がないんで、僕…」
「え?じゃあなんで俺と…その半年とか…」
「それは…貴方が一番親しい人だから…」
「…は?」
バニーの言う事にイマイチ理解出来ねぇ
「…まずは親しい人で慣れようかと思ったんです…いきなり女性に慣れるまで付き合って欲しいなんて言えませんし…」
「………」
「…だからまずは貴方で慣れたくて…僕に一番近くにいる、貴方で……駄目ですか?」
顔を上げて俺の見るバニーが縋るような、求めるような、弱々しい。
思わずドキッとした俺は黙って頷くしか出来なかった…
とは言っても実際、付き合うっつっても男同士なもんだからどう接したらいいのか分かんねぇ。
『休日にデートなんかしてみたいです…』
そう言ったバニーの顔が真っ赤になって…
『…今日は虎徹さんの家に寄って、いいですか?』
そう言ったバニーの顔がはこかむように笑って…
『……今日はこのまま泊まっていって下さぃ……』
そう言ったバニーの顔が……可愛い…
「だーーーーーー!!なんなんだよっ!!」
「わぁっ?!」
「あんなの反則だろおお!!誰が思うよ?!あんな風になっちまうって誰が想像するよ??」
「急に叫ぶなよ虎徹?!ビックリすんだろ!!」
隣にいるアントンが耳を押さえて俺に怒鳴った。
「あ、いたの牛?」
「いたの?じゃねぇよ?!お前が飲みに誘ったんだろうが!」
「あ、いや、わりぃ…」
「で?何が反則なんだ?」
空になったロックグラスの中のアイスで遊びながら横目で見るアントン。
カランカランと鳴るアイスを見つつ俺は口を開いた。
「…バニーのやつ…最近変わったと思わねぇ?」
「バーナビー?…そう言えばそうだな〜…表情が柔らかくなったっていうか、なんかキラキラが増してるな〜…」
「キラキラね〜…」
「恋でもしてんじゃねぇのか?」
「ぶはっ?!」
アントンの言葉に呑み込もうとした焼酎を吹いた。
「きったねぇなぁ〜虎徹〜」
アントンはカウンターにある紙ナプキンを大量に取り出し、俺に渡す。
受け取って口やらカウンターやらをいそいそと拭いた。
「お前が変な事言うからだろ?なんだよ恋って?!」
「何言ってんだ虎徹?バーナビーのアレは恋だろ?好きなヤツでも出来た顔だろ?」
恋って…んな訳ねぇだろ?
今アイツとお試しで付き合ってんの俺だぞ?
そしたらアイツが恋してる相手って俺って事になんじゃねぇか??
………いやいやいやいやいやいやいやいや、それはねぇだろ??
だってバニーは今後女と付き合う時に不安だからっつってたもん!
だから今アイツの一番近くにいる俺でお試しで付き合ってんだから!
俺はお試しの相手で……そう…
「どうした虎徹?」
「わりぃ!」
なんか分かんねぇ不安にかられた俺はポケットの中から数枚の金をカウンターに叩きつけて店を出た。
そのまま俺は必死に走った。
アントンの話で俺はむしゃくしゃした。
バニーが俺に向かって恥ずかしそうに笑ってるのも半年で終わる。
本当に好きな女が出来たらその女にバニーを持ってかれる。
いや、もしかしたらもう好きな女が出来て、でも俺に半年付き合えと言った手前、元に戻る事を言い出せくなったのかもしれねぇ。
そう思ったらむしゃくしゃした。
俺は無我夢中で走って、気が付いたらバニーのマンションに来ていた。
部屋番号を押してバニーを呼び出した。
少しして音声のみでバニーが出る。
「バニー!俺だっ!開けてくれっ!!」
『えっ?!虎徹さん??』
「いいから今すぐ開けてくれっ!」
『急にどうしたんですか?今日はバイソンさんと飲むからって…』
「さっきまで飲んでたけどっ、とにかく開けてくれよ!」
『……少し待って下さい…』
プツン…
通信が切れてバニーの声が聞こえなくなった。
…もしかしたら誰かいるのか?
だからすぐに入らせて貰えないのか?
つーか、これじゃあまるで…
『どうぞ』
カチリとロックが外れる音とともにバニーの声。
俺はマンションの入り口へ足を進めた。
バニーの部屋の前についてインターホンを鳴らし、部屋の中へと入る。
リビングに入るとバニーが風呂上がりだったみてぇでTシャツと短パン姿で頭からバスタオルを被ってゴシゴシとしていた。
なんだ〜…風呂入ってただけか〜…
なんだかホッとして俺は息を吐いた。
そしてバニーの格好を改めて見る。
短パンから見える白くしっかりした綺麗な筋肉。
それなのにどっかむっちりしていて…
………だーーっ!!何考えてんだ俺はっ?!
むっちりってなんだよ、むっちりって!!
「虎徹さん?」
1人頭を抱えてぶるぶるしている俺にバニーが声を掛けてきた。
「んぁ?あぁ、なんでもねぇ…」
「すみません座る所がないので適当にしていて下さい」
バニーは申し訳なさそうな顔しながらリビングを出て行った。
多分髪を乾かす為に洗面所にでも行ったんだろう。
バニーを見送って俺は部屋の中を見渡した。
「あいっかわらず、なんもねぇなぁ〜」
広いリビングにあるのはリクライニングチェアと小さいテーブル。
そのテーブルの上にパソコンとテレビのリモコンとブリキのおもちゃ。
「…せめてソファくらいあればいいのにな〜…」
こんな何もない部屋にあいつはいずれ女と一緒に…
でっかい窓辺に腰を下ろす。
この綺麗な夜景をあいつはいずれ女と見て抱きしめてキスでもするのか…
頭をガシガシと掻く。
愛しているなんて囁いてその女の身体を…
「あーーーー!!くそっ!!」
「虎徹さん?」
「わあっ!」
「どうしたんです?顔が変でしたけど?」
「変ってなんだよ?!」
「すみません…ふふ…なんだか百面相していたので…」
クスクスと笑いながらバニーは俺に缶ビールを渡した。
そのまま少し間を空けてバニーも窓辺に腰を落とした。
「で?どうしたんです?急に来るからびっくりしました」
長い脚を軽く組んで、首を傾げる。
「…虎徹さん?」
黙ってる俺に顔を近づけてくる。
俺はバニーのほっぺに手を添えた。
そして引き寄せてバニーの唇を奪った。
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