BL小説(TIGER&BUNNY編2)

□【虎兎】兎の嫉妬
1ページ/1ページ


「ジュ〜ニアく〜ん」

アポロンメディアのヒーロー事業部。
僕と虎徹さんがデスクに向かっていると懐かしい声が聞こえてきた。
振り向くと相変わらずのニヤけた顔でこちらに向かってくる男。

「…ライアン」

「おぉ!お前どうしたんだ?」

虎徹さんが書類仕事を放棄しライアンに問いかける。

「ちょ〜っと休暇貰ってさ〜、こっちに遊びに来てやったんだ」

「お前元気にやってんのか?」

「あぁ。もちろんだぜ」

楽しげに話す虎徹さんとライアンを横目に見る。

「ジュニアく〜ん。元気?」

「えぇ、まぁ」

「相変わらずつれないねぇ」

「なぁバニー!仕事終わったらライアンと3人で飲みに行こうぜ?」

「え?…でも、今日は…」

今日は久しぶりに虎徹さんと2人っきりの夜を過ごす予定だったのに…

「な〜に〜?ジュニアくん予定とか入ってた?」

「…いえ」

「じゃあいいじゃん!せっかく俺様が来てやったのに付き合いしろよ」

ふてぶてしく言い放つライアンの傍でニコニコしている虎徹さんを見て、僕は大きなため息をついた。





定時で上がった僕達は虎徹さんの馴染みの店へ向かった。

…どうして虎徹さんはライアンの同行を許したんだろう?
僕は2週間ぶりに虎徹さんと2人っきりで甘い夜を過ごせると思って…楽しみにしていたのに…
虎徹さんは…楽しみじゃなかったのかな?

わいわいとライアンと話している虎徹さんを見て思わず睨みつけてしまう。

「ジュニアくんどうした?飲んでんのか?」

「…飲んでますよ。お構いなく」

「ひぇ〜きっげん悪っ〜」

「どうしたバニー?具合悪いのか?」

「いえ。大丈夫ですよ?」

「ならいいけど」

…あぁ…帰りたい…

でも、ここで帰ると虎徹さんと一緒にいられないし…

「お!俺ちょっとトイレ…」

虎徹さんがニコニコしながら席を外す。
僕は虎徹さんを見送ってからグラスを傾け、肘をつく。
するとクスクスと笑い声が聞こえ、声の正体は分かりきっていたので睨みつけた。

「ほ〜んと、ジュニアくんて分かりやす〜い!」

「…は?」

「今日はおっさんと2人っきりで過ごしたかった〜って顔に書いてんぜ?」

ニヤリと笑うライアンはいとも簡単に僕の心を読んでいる。

…イライラする…
当たっているだけに何も反論が出来ない。

「前にも言ったろ〜?アンタは顔に出やすいってさ」

「……分かっててやってるんです?」

「まぁ、アンタらと久しぶりに会えたし飲みたかったのもあるからさぁ〜ついな?」

「……」

「安心しな。俺はもう帰るから。後はおっさんと楽しんで〜」

いつの間にか飲み干したグラスを置くとライアンはブラックカードをヒラヒラさせながら出口の方へ向かった。

しばらくして虎徹さんが帰ってくるとライアンがいない事に気付いた。

「あれ〜?ライアンは?」

「先に帰りましたよ」

「なんだよ〜あいつ」

ブツブツ言いながら僕の隣に座る虎徹さんはお酒の入っているグラスを一気に煽った。

「…そんなに彼と飲みたいなら彼のホテルに行けばいいのでは?」

どうにもイラついてそんな言い方をしてしまう。
僕の言葉に虎徹さんはジッと見つけていた。
いたたまれなくなって思わず視線を逸らす。

「…僕も帰ります。会計はライアンがしたみたいなので…」

静かに席を立ち虎徹さんを見ず歩き出そうとした。

「バニー」

歩き出す僕に声を掛ける虎徹さんを無視して僕はそのまま店を出てしまった。



…どうしてあんな態度を取ってしまったんだろう?
僕はただ彼と楽しい時を過ごしたかっただけなのに…

確かにライアンの言う事も一理ある。
休暇でわざわざシュテルンビルドに来て僕達を訪ねてくれたんだ。
少しくらい付き合って楽しく過ごす事を心掛けたってバチは当たらないのに…

「なんて心が狭いんだ…僕は…」

歩きながら呟いた。
苦笑しか出ない。

こんな心の狭い僕に虎徹さんは愛想が尽きたかもしれない。

楽しそうに飲んでいたのに…ライアンに笑いながら飲んでいた彼の顔がとても楽しそうで…

僕はライアンに嫉妬した。

僕との約束より彼がライアンを選んだから。

「バニー!!」

急に腕を掴まれて振り向くと息切れをしている虎徹さんがいた。

「…虎徹さん?」

「おっ、まえ!足はぇーよ!!」

どうして彼が?
彼はライアンのホテルに向かったんじゃないのか?

「貴方…どうして…?」

「どうしてって…お前なんか怒ってるっつーか、寂しげっつーか…そんな顔してたから」

「え?」

「そんな顔したお前、ほっとけねぇだろうがっ!」

「……」

「バニー、どうしたんだよ?ライアンが来てから様子がおかしいぞ?」

「……そんな事ないですよ」

「嘘つけ」

「嘘じゃないです」

「とりあえずお前ん宅行くぞ」

「あ、ちょっ…?!」

僕の腕をそのまま引いて歩き出してしまった。

ライアンより僕の心配をしてくれたのが嬉しい。
力強く僕の手を引く彼の手がとても好きだ。

「…虎徹さん」

「ん?」

僕の問いに振り返りもせずただただ歩いている。

「…好きです」

「……へ?」

彼がとても不思議そうな顔で振り返った。

「バニー…なんだよ急に…」

だんだんと顔が赤くなる彼を見て僕は笑った。
そして歩き出し、逆に彼の腕を引いた。

「好きだって思ったら言ったまでです」

「バニー…」

「帰りましょう」

「…あぁ、そうだな」

小走りで僕の隣に来た虎徹さんは一旦手を離し、指を絡めて手を握った。



.
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ