BL小説(TIGER&BUNNY編2)

□【虎兎】何度でも聞きたいから聞こえないフリをする
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付き合い始めた頃に比べると彼は僕に愛を囁くようになったと思う。

逆に僕は今になって彼に愛の言葉をあまり言えなくなってしまっている。
付き合い始めた当初、僕は浮かれていたんだと思う。

初めて恋を知って、愛を知った。
彼を愛し、愛される喜び。

その高揚感は忘れられない。

…今は気持ちも関係も安定した。
落ち着いて付き合い出した頃の自分を振り返ってみると今度は羞恥心が生まれた。

彼に、好きだと言われて…僕も好きですと答えられなくなった。

恥ずかしい…あの人の顔を見て、好きだと伝えたいのに…恥ずかしい…

だから、僕はあまり彼に愛の言葉を言えないでいる。

気持ちは前よりも大きくなっているのにだ…



「…虎徹さん…言えなくて、ごめんなさい…」

目が覚めて隣で寝ている彼の寝顔を見る。

いつもより幼く見えるその寝顔にキスを一つ。

…溢れ出る…こんなに近くにいて、愛されて、求められているのに…貴方を好きだと言う気持ちが溢れて零れる…

「…好き…貴方が、すき、です…」

意識のない貴方にはこんなにスラリと言える。
一言一言はっきりと、丁寧に…

「…好き…です…虎徹さん…」

輪郭を指でなぞって、触れる箇所に想いを込めて…キスと言葉を…

「…好き…すき…貴方が…大好き…虎徹さん…」

顔中にキスを降り落として、僕はまた彼の胸に顔を埋めた。



ーーーーーーーーーーーーー


少しだけコイツを抱く力を強める。

俺が起きている事に気付かずにすっかり寝息を立てている。

バニー…俺の可愛いバニー…?
お前が俺に言わせてんだぜ?
お前が好きだって、お前が俺に言わせてんだ。

付き合い出した時なんか、俺はお前にあんま、好きだの愛してるだの言わなかったよな?
気持ちはあるのに俺は照れくさくって言えないでいた。

だけど、真っ直ぐなお前の言葉や視線が俺の中から恥ずかしさを拭い去ってくれたんだ。
だからってしょっちゅう言えねぇけど前よりはちゃんと愛してる事分かってくれるようになったよな?


こうやって俺が眠っている間にバニーは俺にキスと愛の言葉を囁くようになった。

俺が気づいたのは少し前からで、最初、なんか聞こえると思ったらバニーの小さな囁きだった。

『…好きです…』

あまり聞かなくなったバニーの言葉は俺の心に突き刺さった。

なんつ〜切ない声で囁くんだ、
お前は…

そう言って抱きしめてやりたかった。

けど…その後、繰り返し紡がれる俺の名前と愛の言葉。
俺は何度でも聞きたいから聞こえないフリをした。


起きている時にも聞きたいけど最近のバニーは照れて顔を真っ赤にして頷くだけ。


…だったら、俺が寝てる間に囁かれるバニーの言葉を聞いていようと思った。

「…でも、そろそろお前の言葉とキスに応えてもいいよな?」

今度、俺が寝ている時にバニーが言ったら、俺も好きだと甘く、甘く応えてやろう。
目を開けて、笑ってやって、そして甘い、甘いキスをしてやろう。


その時のバニーの顔を見るのが楽しみだ…

腕の中でスヤスヤ眠るバニーのおでこにキスをして俺は幸せ気持ちで眠りについた……


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