BL小説(TIGER&BUNNY編2)
□【虎兎】好きで、好きで、好きで
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虎徹さんと結婚して数年。
僕は幸せな生活を送っている。
彼を愛し、彼に愛されて…幸せな家庭を築いている僕はバーナビー・鏑木・ブルックスJr.
数年前に虎徹さんと結婚し一緒に住み始めた。
その時、虎徹さんの娘さんの楓ちゃんが一緒に暮らしたいと言ってくれた。
虎徹さんはもちろん、僕も喜んで一緒に暮らすことを同意した。
「お父さん!パパ!起きて〜!朝よ〜!!」
楓ちゃんの元気な声がリビングから聞こえる。
虎徹さんとベッドで寝ている僕はまどろみの中で楓ちゃんの声を聞きながら隣で眠っている虎徹さんに抱きついた。
「バニー?そろそろ起きろ?」
楓ちゃんの声で目覚めたのかしっかりした声で僕を呼ぶ。
「…バニー?」
僕を抱きしめて髪を撫でてキスをして…
幸せだなと思う。
「…おはよぅ…ございます…」
「ん。おはよう。そろそろ起きろ?」
「…ん〜…」
もう一度僕をぎゅっと抱きしめてから虎徹さんは上体を起こしてベッドから出た。
「もうちょっと…いて…?」
甘えて見上げると虎徹さんは困ったように微笑んだ。
「ったく…どんだけ俺を夢中にさせる訳?」
そう言って僕の傍に腰を落とす。
「ちょっと、お父さん!パパ!早く起きてってばっ!!」
キスをしようと虎徹さんの顔が近づいてきたところにまた楓ちゃんの声が聞こえた。
鼻先をくっつけるくらいに近づいた僕達はそこで止まってしまう。
そして、クスクスと笑い合った。
「おはよう、楓ちゃん」
「おはよう、パパ!」
着替えてからリビングへ向かうと朝食の用意をしていたエプロン姿の楓ちゃんがいた。
楓ちゃんの頬にキスをすると同じように返してくれる。
「楓〜、パパには?」
口を尖らせてせがむ虎徹さんに楓ちゃんは冷たい視線を向けた。
「嫌」
「かえでぇ〜」
「さっ、パパ!席について!ご飯食べよ?」
「はいはい」
「ばに〜」
「はいはい。虎徹さんには僕から…」
拗ねる虎徹さんの頬にキスを1つ。
「愛してるバニ〜」
頬を緩めて僕を抱きしめる虎徹さん。
その様子を呆れ顔で見る楓ちゃん。
こんな朝の光景もいつもの事で、僕は内心楽しんでいた。
今日は僕と楓ちゃんが休みで虎徹さんだけが仕事だった為、出掛ける間際まで仕事を休むと駄々を捏ねた虎徹さんは楓ちゃんに怒られながら出掛けた。
「全く、しょ〜がないお父さんなんだから」
呆れながらも笑っている楓ちゃんに僕は微笑んだ。
「今日は出掛けるの、楓ちゃん?」
「うん。実は…」
高校生になった楓ちゃんには今、好きな男の子がいる。
もちろん虎徹さんはその事を知らない。
僕もあの事がなければ知らなかった事だ。
僕にとっては珍しく忘れ物を取りに帰った時だった。
家から楓ちゃんの声が聞こえた。
話の内容までは聞こえなかったがどうやら電話をしているらしい。
楓ちゃんの声がとても嬉しそうで、どこか弾んでいたから僕は分かってしまった。
その夜、虎徹さんがお風呂に入っている間にそれとなく聞いてみたら顔を真っ赤にして告白してくれた。
同じクラスのダニーという少年に片思いしていると。
その事を聞いた時は複雑な気持ちだった。
嬉しい気持ちと淋しい気持ち…
親心と言っていいのか分からないけれど…多分そうなんだろうと僕は思っている。
今日はどうやらそのダニーからデートのお誘いがあったらしい。
話を聞いている限り、そのダニーも楓ちゃんの事が好きなんだと思うけれど…実際はどうなんだろう?
「今日はせっかくパパも休みなのに一緒にいれなくてごめんね?」
「いいよ。僕なら大丈夫。今日は遅くなる?」
「…どうかな?晩ご飯は食べて帰ると思う…」
「…思い切って告白したら?」
「ヤダ!何言ってんのよパパったら!!」
顔を真っ赤にしてバタバタと部屋へ逃げて行く楓ちゃん。
その姿が可愛くて思わず大声で笑ってしまった。
昼過ぎにダニーが迎えに来た。
ちょっとヤンチャな感じが虎徹さんに似てる。
子供はだいたい親に似た人を好きになるとは言うけれど…楓ちゃんもやっぱりそうなんだな…
不器用そうで、でも人懐っこい笑顔で挨拶する彼の隣で楓ちゃんは照れながら彼の手を引いて、慌てた感じで出掛けて行った。
楓ちゃんを見つめる目が優しかったな…
「案外、告白したら上手くいくかもしれないよ楓ちゃん?」
さて。
僕はこれから掃除と洗濯をしなくちゃ。
いつもは虎徹さんと僕がヒーローの仕事をしていて不規則な為、楓ちゃんが学校から帰ってからしてくれる。
とても綺麗好きで虎徹さんの娘とは思えないくらい家は綺麗に保たれている。
だから僕は休みの日くらい掃除や洗濯を率先してするようにしている。
…料理は正直まだ苦手だから出来ないけれど…
「今日はちょっと料理頑張ってみようかな?」
楓ちゃんはダニーと食べてくるって言ってたし、久しぶりの2人っきりのディナー。
虎徹さんが帰ってきたら楓ちゃんがいない事に拗ねるかもしれないから、僕が頑張って作ってとっても雰囲気のいいディナーにして機嫌を良くしておこう。
そう思うだけで幸せな気持ちになった僕はディナーの材料の買い出しに出掛けた。
彼の事が好きで、好きで、好きで仕方ないし、愛情たっぷりの料理を作るんだと意気込んだ所で素晴らしいディナーが出来るわけではない。
…簡単に言えば失敗した。
1時間程前に虎徹さんから帰るコールがあった。
僕はその電話がかかってくるまでなんとか上手くいっていたから思わず言ってしまった。
『今日は自信作ですよ』と…
少しだけのつもりが長くなってしまった電話を切りキッチンへ戻ると、鍋に火を掛けていたビーフストロガノフが得体の知れない黒い液体へと変化していた。
もうすぐ虎徹さんが帰ってくるというのに今からじゃ作り直すなんて出来ない。
「ただいま〜」
聞き慣れた虎徹さんの声が帰りを知らせる。
マズイ…どうしよう…
「バニー?」
虎徹さんの声に応えられずにいる僕はキッチンで立ち尽くしていた。
「あれ?バニー、いねぇの?」
キッチンの入り口から顔を出した虎徹さんが僕を見て驚いた。
「ただいまバニー!…ってどした?」
ガスコンロの前に立っている僕の後ろから抱きしめて鍋の中身を見た。
「あ〜…失敗しちまったのか〜」
「ごめんなさぃ…自信作だって言ったのに…」
「ま〜…楽しみにはしていたけど…いいんだよバニー…ピザでも頼もうぜ?」
「でも…」
「それよりバニー、おかえりは?」
耳元にキスをされて僕を抱く腕が緩くなる。
振り返り虎徹さんの首に腕を回し、
「おかえりなさい」
とキスをした。
ただいまと虎徹さんからもキス。
毎日、毎日…彼の事が好きで、好きで、好きで、仕方がない…
一緒に暮らして、一緒に仕事して…口喧嘩はしょっちゅうだけれど…
一緒にご飯を食べて、一緒にお酒を飲んで、一緒に寝て…
…離れていてもどこかで彼の事を想っている。
僕はきっと、ずっと、彼の事が好きだ。
この先、何年も何十年も…この命が尽きるまで…
「俺も好きだよバニーちゃん」
ずっと僕に囁いていて下さいね?
「バニー、大好き」
ずっとですよ?
「…バニー…愛してる…」
僕も…ずっと…永遠に…貴方を愛してる…
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