BL小説(TIGER&BUNNY編3)
□【虎兎】俺のバニーは天使か小悪魔か?
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”それ”は付き合い始めて半年目から始まった。
基本、バニーは甘えるのが下手だ。
つーか、人に甘えるというのを知らない。
甘え方が分からないんだと思う。
だいたいの一人っ子って甘えて育つものだけど、そういう環境ではなかったし、甘えられる相手もいなかったんだろう。
だから、”それ”が起こった時は正直ビックリした。
まぁ、本人は寝ぼけていて覚えちゃいなかったが…
付き合って半年。
お互いの家に泊まり、同じベッドで寝るようになったある日。
いつものようにバニーを抱いて、気を失うように寝てしまった可愛い恋人の身体を清めてやって、スゥスゥと寝息を立てるバニーの隣に入り込んだ。
「…おやすみ、バニー…」
バニーの首の下に腕を滑り込ませてから抱きしめる。
唇にかかった髪をそっとよけて、チュッと音を立てたキスをした。
すると…
「…ん…」
もぞもぞとバニーの手が俺の身体をつたい、上に上がってくる。
そして指先が顔をなぞっていく。
くすぐったくて顔が歪む俺。
親指で唇を確認するように何度もなぞっていくと今度はバニーの顔が近づいてきた。
ギョッとなった俺に構わず、顔が近づいた後…
…ちゅっ…ちゅっ…
「…だいしゅき…こて、つ…しゃん…」
緩やかに微笑むとバニーは俺の胸に顔を埋めて、また寝息を立て始めた。
………なんだ?いまの?!え?…ちょ…なに??
バニーからキスをされた。
しかも2回も。
付き合い始めてから今までバニーからキスをされた事がなかった。
いつも俺から仕掛けて、バニーはそれに応えるだけで…
だけど…バニーから初めてキスをされた(大事な事なので2回言った)
「…可愛いなぁ…」
抱いている腕に力がこもる。
こんなにバニーを愛おしいと感じるとは思わなかった。
なんだかんだと可愛いとは思ってたけど…まさか寝ぼけてるとはいえ、甘えられた時の可愛さは想像を遥かに超えていた。
その日、俺は一睡も出来なかった…
その日から俺の楽しみが一つ増えた。
寝ぼけたバニーが甘えてくれる事。
それは頻繁に現れる事はない。
数日の時もあるし数週間って時もある。
ただ"それ"が出た時の俺の睡眠時間は全く無くなるけどな?
そんなある日。
バニーと喧嘩した。
原因は大した事じゃない。
俺が女に色目を使ったとかなんとか…
んなことしてねぇーっての!
正直例の事があって寝不足で接待なんかしたくないのにどこぞのマダムが近づいてきただけで…
ぶっちゃけ、目があんまり開けれなかっただけなのに…
それをバニーがやいやいと捲し立てる様に言うもんだから思わず俺は言ってしまった。
「お前が寝てる時にキスなんかしてくるもんだから寝不足だっただけだっ!」
それを言った後のバニーの顔は真っ赤になっていた。
口がパクパクしてて耳まで真っ赤で…多分本人的には穴があったら入りたい感じだったと思う。
「あ、いや、バニー…?」
俯いて今にも能力発動して飛んで行きそうなバニーに声を掛けながら抱きしめる。
「…飛んで行くなよ?」
「…すみま…ん…ご迷惑を…かけし、て…」
かろうじて聞こえる声は泣いているような鼻声で謝罪の言葉だった。
「…もぅ…止めましょぅ…一緒に、寝、のは…」
身体ごと震え出して、思ってもない事を言うこの厄介な恋人を俺は可愛いとしか思わなくて…
「…誰が迷惑なんて言ったよ?」
「……」
「俺は嬉しいんだぜ?お前が俺に甘えてくれるの…だから、止めるとか言うな…」
「……甘えるのが…嬉しいんです?」
「あぁ。そりゃ好きなヤツに甘えられるってーのは男にとっちゃ嬉しいだけだ」
「…甘えるなんて……僕…子供じゃないですよ?」
「わーってるよ〜。子供だなんて思ってねぇよ?」
バニーの顎に手を添えてそっとキスをする。
「子供にこんな事しねぇだろ?」
ニッと歯を見せて笑ってやる。
すると困ったように笑って、恐る恐る顔を近づけて可愛いキスをしてきた。
「……嬉しい、ですか?」
首を傾げて問いかけるバニーが可愛すぎる!
なに?なんなのこの子??俺を殺したいの?天使なの?
「バニー!!」
「わぁっ?!」
抱きしめていた腕を強くし、そのまま押し倒した。
「お前っ!ほんとっ!可愛すぎんだろ!!」
「えっ?あっ、なっ、えぇ??」
「ったく、どんだけ俺を虜にさせれば気がすむんだよ!」
「ちょっ、何言ってるのか分かりません!」
「だから〜…」
バニーのおでこに自分のおでこをひっつけて、
「俺はお前に夢中って事だよ、バニー?」
「…虎徹さん…」
「…ちょっと臭かったか?」
「…そうですね。でも…嬉しいです」
バニーが俺の首に腕を回す。
「…もっと僕だけを見て?」
「…あぁ…もちろん…」
お互い小さく笑って唇を重ねた。
それからバニーは起きてる時も少しだけだけど、自分からキスをするようになった。
いつまでも照れ臭そうに恐る恐る近づいてからするもんだから俺はその度に心ん中で悶えている。
もう、俺…悶え死んでも本望かな?って本気で思った…
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